研究課題/領域番号 |
16H04462
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大嶋 拓也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40332647)
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研究分担者 |
平栗 靖浩 徳山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90457416)
奥園 健 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40727707)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 建築環境・設備 / リモートセンシング / 地表面音響特性 / 都市環境音響 |
研究実績の概要 |
平成28年度は本研究の初年度であり,以下の検討を行った。 1. 地表面音響特性の時空間変動に関するモデル構築のための参照データとして,地表面音響特性の測定が必要である。そのためには,従来主に行われてきた実験室ではなく,現場での測定が必要である。本研究では軽量な可搬機器で測定が可能で,申請者らによる使用実績のあるEnvironmental Anonymous (EA) 法を第一の候補としていた。しかしながら現場測定手法は,他にも幾つかのものが提案されている。このことから,他の代表的な測定手法であるCramond法 (1984),Allard法 (1985) およびEA法の3者を比較した。その結果,Cramond法では,低吸音性地表面の測定は困難な結果であった。Allard法は,屋外では概ね妥当な結果が得られたものの,EA法よりノイズ性のピークディップが多かった。それらに比較してEA法は,測定のばらつきはやや大きいものの,現時点では最も妥当な測定結果が得られることが明らかになった。 2. 広域の音響特性推定手法を構築し,季節単位での広域の音響特性を捉えるため,ハイパースペクトルカメラを用いた航空写真撮影および地表面音響特性測定の同時実施を,愛知県東郷町において2017年2~3月に行った。 3. 平成27年度までの研究代表者による準備的研究では,代表者在住地の新潟における吸音率の継時変化を導出した。本年度は他地域における地表面吸音率の継時変化モデル構築のための基礎データ収集として,山口県徳山市において実地盤を模した土槽による,まさ土の実測調査を行った。その結果,多孔質型吸音に関わる土中の空隙率の降雨による変化は,地表面から15 cm以下の深さで大きく,30 cm深さでは変化が小さい。また,新潟での検討と同様,自然降雨による土中空隙率の低下により,吸音率が低下する傾向が伺われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,地表面の音響特性の時空間変動の程度および特性の解明と,またそれをリモートセンシングから導出するためのモデル構築を目的にしている。本研究目的に沿って平成28年度は,1. 地表面音響特性の実測データ収集のための測定手法の検討,2. 下半期からのハイパースペクトルカメラを用いた航空写真撮影,3. 新潟以外の地域での地表面音響特性の継時変化データ収集,の3点を年度当初計画における検討事項とした。研究実績概要で述べたとおり,1. では,申請者らによる使用実績のあるEA法が他の2手法と比較して最善であることが判明し,3. については,新潟以外の地域でも新潟における測定と類似した時間変化特性が得られることが判った。これらの点については,概ね当初計画通り達成したといえる。 一方で2. については,当初計画では平成28年度下半期に2回の撮影を予定していた。しかしながら,我が国で唯一商用化されたハイパースペクトルカメラを運用する業者が,平成28年春季に発生した大規模災害対応の撮影需要に優先使用されることとなり,平成28年内は日程に空きがない状況となった。そのため結局,撮影は平成29年2月の1回となり,やや遅れている状況である。しかしながら,平成29年度については撮影機材のスケジュール確保の十分な見込みがあり,また研究スケジュールには不測の事態対応のための余裕を持たせていることから,平成29年度に一層精力的に撮影および地表面音響特性測定を行うことで,進捗状況の回復は十分に可能と見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成28年度に不測の大規模災害の余波により遅れを生じた,ハイパースペクトルカメラを用いた航空写真撮影および地表面音響特性測定の同時実施を精力的に継続し,通年での地表面の分光光学的特性および音響特性の基礎データを収集する。これらの収集したデータをとりまとめ,撮影結果として得られる地表面分光特性と地表面音響特性の突き合わせを行う。そこから,広域の音響特性推定モデル構築に向けた基礎的な検討を行う予定である。また,1.の地表面音響特性測定法についても,より良い手法を継続的に検討していく予定である。
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