人工的環境(built environment)を構成する建築部材・設備、家具家電などを特定したうえで、①個別識別性、②設置可能なセンサー、③ネットワークへの接続可能性(通信仕様や使用プロトコルの現状など)、④作動様態及び制御性の観点から、将来IoTに組み込まれていく可能性のあるThingsをリストアップした。これをもとに、人工的環境にどのようなIoTのアプリケーション・ソフトウエアが導入されてくる可能性があるのかシナリオ群を作成した。 描き出された個々のシナリオをもとに、建築空間内のThingsを作動させるIoTのアプリケーション・ソフトウエアが作動するためには、どのような「場の状況」を認識することが前提となるのかを整理した。そのうえで、①如何なるセンサーを配置して、②如何なるデータを集め、③如何に解析すれば、「場の状況」を推定できるのかを検討し、推定のための情報プロセス・モデルを作成した。この情報モデルをもとに、実験住宅内の各Thingsに付帯したセンサーに加えて、住宅構成材にもセンサーを配置し、①在宅状況、②居住者が体感する室内気候状況など、「場の状況」が実際に推定できるのかを検証した。 建築の同一空間内に所在するThingsに複数のアプリケーション・ソフトウエアが作用することによって混乱が生じるおそれがある。そこで、作成したシナリオ群をもとに、おこりうるアプリケーションから発せられるコマンドの組み合わせを整理したたうえで、その優先度づけをどのように論理づければよいのかを検討した。 以上の「場の状況」の推定方法、コマンドの優先度付け原則をもとに、「場所単位での統合的機能調整システム」のための基本的アルゴリズムを構成した。
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