研究課題/領域番号 |
16H04475
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超高齢社会 / 付加住宅 / 住宅資産 / 住宅投資 / 相続 / レントアウト / 空き家 / 住宅政策 |
研究実績の概要 |
超高齢段階に入った日本社会の安定を維持しようとするとき、住宅ストックの利用システムをどのように構築するのかは、政策形成上の重要な問いの一つである。本研究は、「複数住宅所有」の増大という現象に着目し、その実態と役割を明らかにすることを目的とする。超高齢社会とは、住宅ストックが大量に蓄積した社会である。そこでは、複数の居住用不動産をもつ世帯が増える。そして、高齢者の複数住宅所有は、ミクロレベルでは、世帯の生活条件を左右し、さらに、マクロレベルでは、住宅市場のあり方に影響する。複数住宅所有は、これまでほとんど注目されてこなかった。しかし、その増加が、住宅供給システムの検討において考慮すべき重要な要素となっていることを、実証的に明らかにする。 この目的を念頭に置いたうえで、昨年度開始した住宅・土地統計調査、全国消費実態調査のミクロデータの独自集計を継続し、付加住宅所有を所得階層等に関連づける分析を行った。さらに、昨年度実施した付加住宅所有世帯を対象としたウェブアンケートの結果を分析し、一方では、資産価値の高い付加住宅を所有し、その貸し出しから所得を得ている高所得の世帯が存在し、他方では、資産価値がほとんどない空き家のままの付加住宅をもち、その管理負担だけを負っている低所得の世帯が存在することを明らかにした。前者では、付加住宅の取得に投資したケース、後者では、付加住宅を相続したケースが多い。付加住宅は、高所得層の「富」を形成し、低所得層にとっては「無駄」にしかなっていない、という重要な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、ウェブアンケートの結果分析を行い、いくつかの重要な発見にいたった。またミクロデータ分析から複数住宅所有の階層化の実態を指摘することができた。
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今後の研究の推進方策 |
統計分析とアンケート結果分析をふまえて、超高齢社会の住宅ストック利用について、どのような政策オプションがありえるのかを検討し、さらに、住宅資産の分配についての理論構築に取り組む。住宅に関する社会階層化の理論は、これまでは、おもに住宅の新規取得に着目していたのに対し、これからは、すでに蓄積した住宅資産のストックの分配をみる必要が大きくなる。この点を、調査結果の裏付けをともなった理論として整理する。
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