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2017 年度 実績報告書

変革期を迎えた建築生産システムとこれを支える諸社会制度の再編の方向性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16H04477
研究機関広島大学

研究代表者

平野 吉信  広島大学, 工学研究科, 名誉教授 (40355904)

研究分担者 浦江 真人  東洋大学, 理工学部, 教授 (10203598)
角倉 英明  広島大学, 工学研究科, 准教授 (50512654)
古阪 秀三  立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (60109030)
安藤 正雄  東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (80110287)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード設計責任 / 多様化・多元化 / 専門家責任 / 内部管理システム / 外部管理システム / 設計の質 / 設計の全体性 / 価格決め
研究実績の概要

課題①「英・米における設計と施工の協働・統合を導入した変革の関連状況の把握」に関しては補足的文献調査等を行い、主に米国における「多様化」の実態を、1)「多様化」の本質は「設計と施工の近接」、2)その結果としてア.発注(設計)側に施工側のノウハウを提供(ECI型)、イ.施工側に設計を含めて一元化(DB)型、ウ.設計責任が発注側と施工側にまたがって多元化(複合型)の3類型がある、3)多様化に伴うプロジェクト運営上留意すべき脆弱性として、ECI型・DB型では設計の完結前に施工者の選定が行われることによる価格決めと設計の質のコントロールの問題、複合型では設計責任の分散による設計の全体性確保の必要性があることを整理・把握した。さらにこの認識に基づき、特に複合型の進展に伴う関連社会制度等の変革の実況について英・米調査を実施した。その結果、1)米英では「設計責任」は従来から建築家のみならず各種の専門エンジニアにより分担されており、特にエンジニア領域において専門分化が著しい、2)これらの多元化した「設計責任」については、「専門家責任」と「リスク管理」を核とした相互調整システムが存在している、3)建築規制等外部からの管理システムも、この設計専門職相互の「内部管理システム」が機能していることを前提に制度設計・運営されている、等の事実を把握することができた。
課題②:「我が国における関連状況の実態把握と「改善」課題の抽出」に関しては、前年度に引き続き、地方公共団体等による「多様」なプロジェクト運営方式の導入の動機及び運営方法のしくみの把握を行ったが、上述のリスク管理の重要性などについてはあまり考慮されていないことが把握できた。
課題③:「我が国の建築生産に内在する問題についての「改善」の可能性の把握等」については、上述の調査分析の進展に伴って得た知見に基づき、可能性の検討を引き続き行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

課題①「英・米における設計と施工の協働・統合を導入した変革の関連状況の把握」に関しては、特に米国における「複合型」のプロジェクト運営の実態について、鉄骨構造の構造設計における詳細設計の分担構造について、詳細・具体的な把握を行うことができ、「専門家責任」及び「リスク管理」を核とした、設計専門職相互の関係による「内部管理システム」の構造を解明する具体的なベースを獲得することができた。これにより、本課題のこの側面に関しては一層の分析・考察の進展を図ることが可能となった。
一方「ECI型・DB型」のプロジェクト運営における脆弱性の視点である「価格決め・設計の質のコントロール」においては、米国で採られている手続・制度が多様化・複雑化している状況までは把握できたが、特に設計の質のコントロールを失わない発注・調達方法の基盤となる「交渉による価格決め」について、そもそも我が国と米・英の「施工コスト」の算出に関わる基本的産業構造(特に専門工事業者の自立性・自律性)が根本的に異なること、すなわち米英の元請コストが専門工事業者の入札をベースに算定されることに対し、わが国では元請の裁量に基づくコスト決めと事後の専門工事業者への割りあてが主流となっていることの違いとその含意が認識され、わが国と英米の関連社会制度の比較のための研究枠組みの再考を余儀なくされている。
このことは、課題②:「我が国における関連状況の実態把握と「改善」課題の抽出」及び課題③:「我が国の建築生産に内在する問題についての「改善」の可能性の把握等」に関する最終的な取り組みの枠組みについても影響が大きく、急ぎ枠組みの見直し・再構築に取り組んでいるところである。

今後の研究の推進方策

課題①「英・米における設計と施工の協働・統合を導入した変革の関連状況の把握」のうち、「複合型」に対応する米英社会システムの実況とその構造把握については、これまでの獲得知見をもとに作業仮説を設定し、その仮説的構造把握の妥当性について、これまで調査に協力してもらった人物・機関に対して確認を求め、検証を早急に進める。「ECI型・DB型」についての課題に関しては、急ぎ補足的文献調査を進め、米英において適用されている制度的枠組みに関して類型化を図ることにより、次段階の現地調査の枠組みを確立する。これに基づいて、年度内の早期に英米調査を実施する。
課題②:「我が国における関連状況の実態把握と「改善」課題の抽出」及び課題③:「我が国の建築生産に内在する問題についての「改善」の可能性の把握等」については、元請-専門工事業者の関係を軸とした施工系産業構造の我が国と米英との差異を踏まえた分析枠組みの再構築を至急行い、この分析枠組みに基づいたこれまでの獲得知見の再検討と追加実態調査を進展させるとともに、国内研究協力者・組織との情報・見解の交換を進め、わが国における制度・システムの将来像の見通しを研究期間内に獲得することを目指す。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] 英・米における建築生産・調達方式の多様化とその背景に関する一考察2017

    • 著者名/発表者名
      平野 吉信
    • 雑誌名

      第33回建築生産シンポジウム論文集

      巻: - ページ: pp.25-32

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 米国におけるIntegrated Project Delivery(IPD)に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      田澤周平、濱地和雄、小笠原正豊、岩松準、志手一哉、蟹澤宏剛、平野吉信、安藤正雄
    • 雑誌名

      第33回建築生産シンポジウム論文集

      巻: - ページ: pp.17-24

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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