研究課題/領域番号 |
16H04479
|
研究機関 | 事業創造大学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝男 事業創造大学院大学, 事業創造研究科, 教授 (80448620)
|
研究分担者 |
後藤 隆太郎 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284612)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 東日本大震災 / 復興まちづくり / コミュニティ再生 / 創造的復興 |
研究実績の概要 |
本研究では、東日本大震災の被災地における「住宅・集落」と「産業・生業」の復興を参与観察し、持続力のある農山漁村の計画論とその実現方法を探ることを目的としている。 二年目となる今年度は、「住宅・集落」の復興については、東松島市、陸前高田市、釜石市、田野畑村などの動向を調査することができた。とくに継続的に調査をしている東松島市では、防災集団移転促進事業および災害公営住宅の整備が1地区を残して終了しているが参与観察を重ね、コミュニティ復興のノウハウや新たに発生している課題について調査をし動向を整理している。併せて、移転先周辺の住んでいる住民と移転住民の新たな関係形成、高齢化が進行する中での次世代の担い手づくり、交流事業による地域外とのつながり形成、行政の役割の変化、コミュニティファンド等の支援団体との連携可能性について調査している。 「産業・生業」の復興については、従来型の産業構造から革新的システムへ転換している施設園芸農家や水産業団体を調査の対象としている。農業の復興では、次世代施設園芸などの事例を調査し、生産の高度化と6次産業化を積極的に展開する戦略により雇用を生み出している実態を明らかにした。水産業の復興では、大船渡市や南三陸町で新規事業に取り組む事例を調査し、首都圏等の新たな販路拡大や合理的な生産体制に変化している実態を明らかにした。併せて1次産業の復興では、オランダ、ベトナム、ノルウェーなどの日本との連関が強い他国の産業振興の動向についても情報を収集することができた。 以上の調査から得られた研究成果は、出版により広く社会発信しすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「住宅・集落」の復興については、宮城県では移転先の宅地や災害公営住宅の提供が完了し、復興まちづくり協議会を閉じている。そして、新しい住宅地では自治会などを中心としたコミュニティ形成に力を入れている。一方で新たな課題や自治を巡る苦労・悩みが浮き彫りになってきた。そうした、復興まちづくりの中で生まれる特有の課題やそれらを解決するための対処や取り組みを整理することができた。また、行政との協働体制、支援団体とのパートナーシップの形やその変化についても状況を把握することができた。これらの理由により、ほぼ計画通りの進展を見せていると判断している。しかし、岩手県では、防災集団移転促進事業および災害公営住宅事業がいまだ完了していない地域が多く見られ、今後も継続して調査を続けていく。「産業・生業」の復興については、以前震災で失った販路の回復、深刻な人材不足、当事者の経営力や技術力の革新などの課題が解決されておらず苦戦を強いられている企業や生産組織が散見される。踏査を通じて、こうした課題を認識することができたことを理由として、本研究は概ね順調に進展していると捉えており、今後も課題の原因を解明していくとともに、解決のための糸口を探っていきたい。本研究では、西日本の災害復興事例との比較研究も扱っており、昨年度に引き続き熊本大震災の被災状況を確認するために現地踏査を行った。 研究分担者とのミーティングは、当初の予定通り3回実施しており、定期的に研究進捗の確認と成果共有に寄与することができたと捉えている。 これらのことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度も、ほぼ当初の予定通りに研究を遂行していくこととしたい。「住宅・集落」の復興については、これまで関わってきた地域を中心に参与観察を続け経年変化を考察していく。併せて全体的な状況を把握するために、包括的に被災地の防災集団移転促進事業と災害公営住宅整備事業の状況ついて情報を収集する。 「産業・生業」の復興については、これまで見てきた事例について継続調査をしていくとともに、国、県、被災市町担当課等へのヒアリングを実施し、産業復興政策の効果を検証していく。 研究分担者とは定期的にミーティングを持ち、お互いの情報を持ち寄り震災復興に係る知識を深めつつ、研究成果の考察・分析を重ねていく。さらには、被災地や関連事例のフィールドワークを行うことと、有識者や関係者等から幅広く知見やアドバイスの提供を受けるよう努め、研究成果の社会的活用や政策形成などの一般化について可能性を探っていく。今年度からは被災地からやや遠方のところにある新設の大学に赴任したため、十分とは言えない研究環境等を整えながら研究目的を達成できるよう努めたい。
|