三年目(研究最終年度)となる今年度は、「住宅・集落」の復興については、東松島市、名取市、南三陸町などの動向を調査した。とくに参与観察を重ねている東松島市では、防災集団移転促進事業および災害公営住宅の整備全てが2018年度3月をもって終了した。全ての住民の移転が完了しているわけではないが、多くの住民が生活の再建に漕ぎ着けている、一方で新しい自治会設置やコミュニティ活動を展開していく上で、新たな課題の発生が確認された。防集事業により住宅を自主再建した被災者は、隣近所の関係づくり、自治会の設置までの住民参加のプロセスの重要性が確認できた。災害公営住宅では、高齢者の入居割合が高くお茶会などの交流プログラムの企画・実施の体制と継続性の高めるのサポート体制が重要性である。さらには、移転先周辺の住んでいる住民と人間関係、高齢化が進展していく将来に備えた新たな担い手づくり、行政の役割の変化、コミュニティファンド等の支援団体との連携、空き屋が発生した場合の移住等の受け入れや転用による機能再編や在り方を検討していく必要がある。 「産業・生業」の復興については、従来型の産業構造から革新的システムへ転換している施設園芸農家や水産業団体を対象に調査した。農業の復興では、移転元地を活用して次世代施設園芸や植物工場を展開している生産者を調査し、トマトやリーフ野菜などに関する生産の高度化と付加価値の向上を目指す6次産業化を積極的に展開する戦略により雇用を生み出している実態を明らかにした。水産業の復興では、大船渡市や南三陸町で新規事業に取り組む事例を調査し、新たな販路拡大や合理的な生産体制に変化している実態を明らかにした。併せて、オランダ、ノルウェー、韓国などの動向を参考事例として情報収集することができた。 以上の調査から得られた研究成果は、学会発表、出版により広く社会発信しすることができた。
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