研究課題/領域番号 |
16H04481
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
増田 達男 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (70125095)
|
研究分担者 |
永野 紳一郎 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (40329371)
岩見 達也 国立研究開発法人建築研究所, 住宅・都市研究グループ, 主任研究員 (20370744)
今井 健太郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 技術研究員 (20554497)
都司 嘉宣 公益財団法人深田地質研究所, その他部局等, 客員研究員 (30183479)
三戸部 佑太 東北大学, 工学研究科, 助教 (60700135)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 津波火災 / 可燃瓦礫 / 浸水深 / 車両火災 / 航空レーザ測量データ / GIS / DSM / DEM |
研究実績の概要 |
南海トラフの巨大津波による津波火災の危険性を予測するため、内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」のデータを入手し、10mメッシュの平均浸水深をGIS上で把握した。これに、国土地理院の基盤地図情報から建物情報として、堅牢建物と普通建物の別をGISのポリゴンデータとして照合し建物面積を算出した。普通建物は木造建築を表しており、津波によって倒壊流出し、可燃瓦礫となる。建物面積と可燃物量の関係は国土技術政策総合研究所の「まちづくりにおける防災評価・対策技術の開発」から得た。さらに、浸水深に応じた被害率から可燃瓦礫の発生量を把握するに際して、別に平均地形勾配を求める必要がある。これについては、GISにより地域の浸水範囲の地形勾配を5mメッシュ単位で求めた。 発生した瓦礫が津波で流され引き波によって堆積する特性については、東日本大震災による実例によって把握する必要がある。そのために、瓦礫の堆積分布を正確に把握する必要がある。東日本大震災直後の標高を表わした航空レーザ測量データとしてのオリジナルデータ(DSM)と同時期の地盤の高さを表わしたグラウンドデータ(DEM)の差分からメッシュ単位で瓦礫の堆積量を把握する方法を用いる。 この木質瓦礫の分布と量を説明づける変数として、津波の浸水深、木造家屋の配置、地形の勾配、そして残留建築等との関係性を、今後、定量的に明らかにする予定であるが、今年度は。オリジナルデータとグラウンドデータを入手してデータ内容の確認を行った。 一方、津波による車両火災の発生要因を明らかにするため、関連する公開情報を調査した。その結果、ガソリンの漏出状態においてバッテリーからの電力の短絡火花による着火の可能性、あるいは、漏電による樹脂等の加熱による火災発生の可能性が仮説として立てられたので、津波火災の被災地における動画や写真情報にもとづく確認実証へつなぐことができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
津波火災の予測に際しては、研究計画どおり、南海トラフにおける内閣府の津波データを用いることができた。ただし、可燃瓦礫の堆積分布とその量を水理実験によって求める計画については、地盤の摩擦抵抗の再現性が困難であることが明らかとなった。そのため、東日本大震災直後の標高を表わした航空レーザ測量データとしてのオリジナルデータ(DSM)と同時期の地盤の高さを表わしたグラウンドデータ(DEM)の差分から瓦礫の堆積量を把握する方法を新たに採用することとした。その結果、むしろ、精度的信頼性が格段に向上することになった。 以上のように、研究方法としての水理実験計画を航空レーザ測量データを用いる地理情報処理へと変更することで、研究の遂行が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
東日本大震災における航空レーザ測量データの標高差分から、木質瓦礫の量と分布を把握し、その説明変数として、津波の浸水深、木造家屋の配置、地形の勾配、そして残留建物等との関係性を求める。 一方、南海トラフの巨大津波の対象地域において、浸水深に応じた木造家屋流出率を用いて木質瓦礫の発生量を求め、上記の説明変数にもとづいて分布を把握する。これにより、「瓦礫火災シミュレーションプログラム」を用いて津波火災の発生状況を予測することができる。車両およびLPガスボンベによる着火については、統計値の発火率と対象地域の浸水範囲から推定する。 以上の危険予測にもとづいて、瓦礫の堆積防止、発火要因の防護および発火阻止等の防火対策を検討する。
|