研究課題/領域番号 |
16H04487
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関 剛斎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40579611)
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研究分担者 |
窪田 崇秀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00580341)
今村 裕志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (30323091)
森山 貴広 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50643326)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁性材料 / 磁化ダイナミクス / スピントロニクス / ナノ構造 / 積層制御 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、反強磁性層と強磁性層の接合における磁化ダイナミクスや、異なる強磁性層間の界面における反強磁性的な交換結合の利用により、磁化反転を高速化および低エネルギー化することを目指し研究を遂行している。具体的には「反強磁性共鳴に基づく超高速磁化ダイナミクスの観測」および「スピン軌道トルクによる反強磁性結合した界面磁化の制御」を研究目的とし、前年度までは異種磁性層を複合化させた薄膜における磁化反転機構の解明および人工反強磁性スピン構造の実現に取り組み、さらに時間領域測定用セットアップを構築した。当該年度は、(1)人工反強磁性スピン構造の磁化反転、 (2)反強磁性構造とスピン流の相互作用、(3)複合化ナノ構造における磁化ダイナミクスに関して、以下の研究内容を遂行した。 (1) 人工反強磁性スピン構造の磁化反転:CoGdアモルファス合金では、CoとGdの磁気モーメントが反平行に結合するため、合金組成を調整することで、マクロな磁気特性に対し支配的となる元素を制御できることが知られている。そこで、組成の異なるCoGdアモルファス合金層を積層化させて、人工的に反強磁性スピン構造を形成させた。この人工反強磁性スピン構造に対し、隣接する非磁性層からスピン流を注入した時の磁化挙動を解明した。 (2) 反強磁性構造とスピン流の相互作用: CoGd層/Pt層の二層膜を用いてスピンホール磁気抵抗効果および異方性磁気抵抗効果のCoGd層組成依存性を調べたところ、異なる組成依存性が観測され、散乱機構の違いなどバルクおよび界面での相互作用に関する知見が得られた。 (3) 複合化ナノ構造における磁化ダイナミクス:異種磁性層を複合化させたナノサイズ試料において励起される磁化ダイナミクスについて、マイクロマグネティクスシミュレーションから実験結果を再現することに成功し、ダイナミクスの詳細を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究では、組成の異なるCoGd層を積み重ねた人工反強磁性構造に対するスピン軌道トルクの検討を行い、並行してCoGd層/Pt層試料のスピンホール磁気抵抗効果および異方性磁気抵抗効果のCoGd層組成依存性を調べ、反強磁性構造とスピン流の相互作用の機構を明らかにした。また、励起される磁化ダイナミクスについて、マイクロマグネティクスシミュレーションから実験結果を再現することに成功した。さらに、反強磁性体の超高速磁化ダイナミクスを時間領域で観測するための測定セットアップの改良も進んでいる。当初計画した試料の作製やスピン軌道トルクと反強磁性構造の相互作用機構の解明に成功していることから、今年度の研究実施内容は計画を概ね達成するものであり、研究は順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究遂行により得られた成果をもとに、平成30年度も引き続き人工反強磁性構造に対するスピン軌道トルクによる磁化スイッチングの検証を行う。Pt層で挟まれたCoGd層に対し、スピンホール効果由来のスピン軌道トルクを作用させ、CoGd層の磁化反転を励起することを試みる。磁化反転の検出には、磁気抵抗効果あるいは磁気光学カー効果を用いる。得られた知見をもとに、スピン軌道トルクによって反強磁性構造の自励発振に至るための条件について検討する。また、時間分解磁気光学カー効果装置を用いて時間領域における磁化反転過程の評価を行う。そして、マイクロマグネティクスシミュレーション等の計算と比較することで磁化反転時のダイナミクスを解明し、高速磁化反転を実現するための指針を得る。そして、最終年度として研究全体を総括する。
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