研究課題/領域番号 |
16H04488
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小池 邦博 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40241723)
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研究分担者 |
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (20203078)
稲葉 信幸 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50396587)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金属物性 / 磁性 / 構造・機能材料 / 電子・電気材料 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
本研究は,「交換結合状態の異方性」とナノ構造を精密制御可能な「薄膜プロセス」を利用し,レアメタルフリーと高い最大エネル ギー積,高保磁力を同時に達成可能とする基盤技術となる「界面制御された積層型ナノコンポジットモデル磁石膜の開発」を目指すものである. 本年度は界面制御したNd2Fe14B/Fe基合金ナノコンポジット膜形成は,c軸が基板に垂直となる高配向Nd2Fe14B相形成が必須であると同時に高い角形性と保磁力が必要であるため,単結晶基板の表面修飾のため,フラッシング条件を制御することでバッファ層制御を精密に実施した結果,膜面直ならびに面内方向へも配向したフルエピタキシャル成長のMo(001)単結晶下地層の形成に成功した. さらに,この単結晶Mo(001)下地上に300℃でのNd-Fe-B/Fe積層膜の製膜後,UHV中での700℃のポストアニールにより,減磁曲線が一体となり,膜面直ならびに面内方向共に約6 kOeの保磁力が発生する等方的なハード磁性が確認された.さらにNd-Fe-B/Feの間に1 nm厚の薄いMo中間層の挿入で,膜面直方向が磁化容易軸となる磁気異方性が現れ,約6 kOeの保磁力が発生した.一体となった減磁曲線が得られ,多数の反転磁場で計測されたFORC(リコイルカーブ)の傾きからもNd-Fe-B層とFe層間に正の交換結合が作用していることが示唆された.この異方性Nd-Fe-B/Mo/Fe積層膜のTEM観察の結果,わずかな厚さのMo中間層によって,その積層周期が保持され,且つ磁化を低減させるNd-Fe-B層側面へのFeの回り込みが抑制された理想的な界面が形成されていることが明確となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初本年度の計画において,レーザーアニールによる結晶化とハード磁性の出現を目指していたが,UHV多元製膜装置を用いてポストアニール方法を試行した段階で,Nd-Fe-B/Mo/Fe積層膜において,正の交換結合をもち,さらに保磁力の発生と異方性が同時に出現するMo中間層効果を見出すことに成功した.このため,このアニール実験に用いる積層膜の製膜ならびにポストアニール実験と同時にUHV多元製膜装置へのレーザーアニール装置の取付とそのアニール装置の予備的な実験を実施した.さらにソフト層として高飽和磁化膜の検討を実施することが予定されていたが,UHV多元製膜装置を用いたポストアニール実験の取り組みに集中した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最大エネルギー積の向上を目指し,積層膜のハード層であるNd-Fe-B層とソフト相であるパーメンジュール組成となるFe-Co合金の結晶性を高める取り組みを実施する.また,磁化過程における角型性を高めるため,理想的な微細構造を形成する目的でNd-Gaを拡散源とした積層膜を形成し,その磁気特性と微細構造観察・分析の結果を考察することで高い磁石性能をもつ異方的な磁気特性をもつナノコンポジット膜の作製条件の確立を目指す.
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