研究課題/領域番号 |
16H04493
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
水口 佳一 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50609865)
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研究分担者 |
三浦 章 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10603201)
寺嶋 健成 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(講師) (20551518)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 層状化合物 / 超伝導 / 熱電変換 / 化学圧力 / 結晶構造解析 / 電子状態 / 局所構造 / 新物質開発 |
研究実績の概要 |
本研究は,BiCh2系層状化合物において,特に化学圧力を制御することで超伝導特性と熱電変換特性を系統的に変化させることで,物性と相関するパラメータを特定することを第一の目的としている.さらに,それに基づき新規超伝導体,熱電変換材料を創出することを目的とする. これまでの研究において,BiCh2系層状化合物REO1-xFxBiCh2(REは希土類,Chはカルコゲン)において,REサイトおよびChサイトの元素置換により面内化学圧力を制御できることを見出し,そこで超伝導が発現したり,高熱電性能が得られることを解明してきた.より具体的に,面内化学圧力の上昇によりBiCh面内におけるChサイトの異常に大きい原子変位パラメータが抑制されることを見出した.それにより,バンド計算から予想される電子状態が実際の物質において実現することがわかってきた.今後は,原子変位パラメータ解析を温度の関数として展開することで,動的な原子振動か静的な局所構造乱れかを特定することで,本研究課題の第一目的を達成できると考えている. これらの研究成果に基づき,新物質としてEu0.5Ce0.5FBiS2-xSex超伝導体を発見し,また,面内化学圧力を最適化させた組成においてSe同位体効果を検証し,非従来型超伝導機構を示唆する結果も得た.新たな化学圧力印加方法の探索により,多層型伝導層を持つRE2O2M4S6(MはPb,Ag,Biなどの金属)を新規に合成した.さらに,本研究では扱う元素をさらに拡張することで,LaOInS2光触媒の発見やNaSn2As2層状超伝導体の発見も達成している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BiCh2系層状化合物REO1-xFxBiCh2(REは希土類,Chはカルコゲン)において,REサイトおよびChサイトの元素置換により面内化学圧力を制御する手法が確立し,計画当初に期待していた超伝導・熱電性能と結晶構造パラメータ(化学圧力)の相関について明確な結果が得られている.さらに,その構造パラメータが持つ物理的意味も平成30年度の研究で解明できることが強く期待される. また,研究計画時には想定外であった新規物質が数多く開発されているため,本研究は当初の研究計画以上に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
BiCh2系層状化合物REO1-xFxBiCh2(REは希土類,Chはカルコゲン)において,面内化学圧力を印加した際の原子変位パラメータ解析を温度依存性として評価することが第一課題である.これにより,物性と結晶構造パラメータ(化学圧力効果)の相関の本質が見極められる. また,これまでに得られている新規化合物LaOInS2やRE2O2M4S6,NaSn2As2についても超伝導および熱電性能の評価を進める.これらの物質はBiCh2系層状化合物との類似点が非常に多いため,これらについても化学圧力をキーワードに物質開発および物性評価を行う.
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