研究課題/領域番号 |
16H04494
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山根 久典 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20191364)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 亜酸化物 / 結晶構造解析 / 単結晶X線回折 / 固溶体 |
研究実績の概要 |
15族元素のビスマス(Bi)は融点が272℃の金属で,酸化物誘電体や超伝導体を構成する主要な元素となっている.本研究では,不活性雰囲気下でBi融液をフラックスとして用いることにより,低原子価の遷移金属酸化物や,遷移金属元素と-2または-3のイオン価数のBi陰イオン(ビスマス化物イオン)を共に含む化合物の単結晶を合成し,それらの結晶構造と結晶化学的な特徴や抵抗率などの電気的特性を明らかにすることを目的とする. 本年度は,Biフラックスを用いて,900°Cで50~100μmの粒状で黒色金属光沢の新規化合物Ti12-δGaxBi3-xO10の単結晶を合成することができた.信頼度因子(R1)が1.51から2.40%で結晶構造が解析され,Ga/Bi1サイトのGa占有率は,出発原料中のGa/Bi比の増加とともに0.472(6)から0.581(8)まで増加した.出発原料中のGa/Bi比(0.03/3.0~0.20/3.0)よりも結晶中のGa/Bi比の方が大きく,単結晶にGaが優先的に取り込まれることが示された.Ti12-δGaxBi3-xO10の式量当たりに換算したGa量xは1.42から1.74で,格子定数の値はGaとBiの原子サイズの違いを反映し xの増加とともにa = 13.5616(3)Åから13.5402(5)Åまで単調に減少した.また、xの増加とともにTi欠損量δが0.77から0.62に減少した.このため総価電子数はxの値に依存せず,ほぼ一定の値(117.1)となることが見出された.Ti11.33Ga2.01Bi0.99O10の固溶体の多結晶体の合成にも成功し,10 K~300 Kの抵抗率が2.2~2.4×10^-5 Ωmで,ほとんど温度に依存しないことを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bi融液をフラックスに用いてTi12-δGaxBi3-xO10固溶体の単結晶を合成し,X線結晶構造解析でTi欠損について検討するとともに,固溶体の多結晶体を作製して,電気抵抗率を測定することもできた.この研究の過程で,Ti-Ga-O系の新規亜酸化物も合成され,一部は導電率測定が可能なサイズの単結晶も得られている.現在それらの結晶の構造を解析し,電気的特性評価を進めている.さらに,Ti-Zn-Oの系においても,結晶構造の詳細が明らかにされていない亜酸化物の単結晶を作製することに成功した.これらについても構造解析を進め,Biフラックスで作製される亜酸化物の結晶化学的特徴の解明が進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,Ti8BiO7の低温構造相転移を解明することを目的として測定された低温X線回折データを解析するとともに,Biフラックスを用いて新たに合成された亜酸化物について,結晶構造解析や電気的特性評価を進める.さらに本研究を進める過程で課題が明らかにされたBi-Tiの2元系化合物についても,可能な範囲で結晶相の確認や結晶構造解析を行い,亜酸化物との関係を明らかにする.また,最終年度にあたるため,3年間の研究で得られた成果を総括する.
|