研究課題/領域番号 |
16H04497
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岸本 昭 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30211874)
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研究分担者 |
林 秀考 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90164954)
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90598690)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミリ波 / ジルコニア / セリア / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
マイクロ波のうちミリ波は多くのセラミックスで吸収され、自己発熱をもたらす。ミリ波照射加熱により、迅速・選択的に対象物質を加熱できるために、材料合成や物質創製に利用されてきた。本基盤研究での研究では、このミリ波照射加熱を高温酸化物型燃料電子(SOFC)の加熱方式として用いようとの提案である。SOFCの加熱にミリ波を用いると、セルのみを迅速に動作温度まで到達することができるため、需要がある時に少ないエネルギー投入量で発電できるとの利点が考えられる。これとは別にミリ波加熱による非熱効果が報告されており、燃料電池における酸化物イオンの移動が促進するとの報告をジルコニア電解質について行ってきた。 平成29年度はこれまでのジルコニア系ではなく、セリア系固体電解質においても、ミリ波照射下でのイオン伝導度の促進を見出している。各種添加物の量を変化させ、ミリ波吸収度合いとイオン促進の割合を比較したところ、吸収度合いとは直接相関せず、非熱的な効果による促進が示唆された。 セリア系固体電解質を用い燃料電池を作製し、通常加熱およびミリ波照射加熱での電池の発電特性を比較したところ、同じ温度でも50%以上の発電特性の向上が認められた。この発電効率向上を、電解質の導電率向上に伴う、オーム損失の低減と結びつけて議論した。この実証実験は、燃料電池の動作温度を変えない場合、ミリ波照射の工学的利点とあわせ、投入エネルギーを差し引いた正味の出力向上を示している。また、同じ出力をより低温で得られるため、発電までの時間を短縮できるほか、構成材料を汎用、安価で、耐久性が高いものに代替することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジルコニア系だけではなくセリア系電解質でもミリ波加熱下での導電率の向上を見出し、実際に燃料電池を構成したときの効率向上を見出したため。
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今後の研究の推進方策 |
燃料電池加熱へのミリ波照射利用を目指す場合、電解質支持型を採用することになり、いかに電解質の抵抗を低減するかが発電効率向上のカギとなる。導電率一定の場合は、厚みを減じればそれに応じて抵抗値も減少するが、同時に外力に対する機械的信頼性も低減する。研究実施者はこれまでアルミナを電解質に分散することにより、機械強度と導電率を同時向上させることに成功している。ミリ波照射下でも機械強度と導電率が向上したうえで、さらにイオン伝導促進効果が発現するかどうかを調べる。
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