マイクロ波のうちミリ波は多くのセラミックスで吸収され、自己発熱をもたらす。ミリ波照射加熱により、迅速・選択的に対象物質を加熱できるために、材料合成や物質創製に利用されてきた。本基盤研究での研究では、このミリ波照射加熱を高温酸化物型燃料電子(SOFC)の加熱方式として用いようとの提案である。SOFCの加熱にミリ波を用いると、セルのみを迅速に動作温度まで到達することができるため、需要がある時に少ないエネルギー投入量で発電できるとの利点が考えられる。これとは別にミリ波加熱による非熱効果が報告されており、燃料電池における酸化物イオンの移動が促進するとの報告をジルコニアおよびセリア電解質について行ってきた。昨年度はセリア系固体電解質を用い燃料電池を作製し、通常加熱およびミリ波照射加熱での電池の発電特性を比較したところ、同じ温度でも50%以上の発電特性の向上が認められた。 平成30年度は、ジルコニア系についても、燃料電池作製し通常加熱およびミリ波加熱での電池の発電特性を比較し、発電特性の向上を確認した。さらにセリア系については、電解質以外の各素過程に及ぼすミリ波の効果を調査した。まず、ターフェルプロットから交換電流密度を算出したところ、ミリ波照射下では3倍以上に増加していることがわかった。さらに電解質とカソードからなるハーフセルのインピーダンスを測定したところ酸化物イオンの拡散抵抗が大幅に低減していることがわかった。これらより、ミリ波照射により、電解質抵抗、イオン拡散抵抗が大幅に低減し、交換電流密度を向上させることで、燃料電池の発電特性が向上していることがわかった。 以上のようにSOFCの加熱方式として、ミリ波照射を用い、電解質の導電率向上の確認とセルの出力向上を実証した。得られた結果は、これまで欠点とされてきたSOFCの長時間耐久性を克服し、オンデマンド発電の可能性を示した。
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