研究課題/領域番号 |
16H04498
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
勝又 健一 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 准教授 (70550242)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オキシ水酸化鉄 / 水素 / 酸素 / アルコール / 光自己還元 |
研究実績の概要 |
FeSO4・7H2O(3g)を100 mlの水に入れ、スターラーにより撹拌し溶解させた。その後pH6になるようにアンモニア水で調整し、80oC、4時間の条件で加熱し茶色い沈殿物を得た。得られた沈殿物を洗浄した後に、60oCの乾燥機で24時間乾燥させることでFeOOHを得た。水素反応測定条件は水36 ml、メタノール4 ml、FeOOHを50 mg反応容器に入れHg-Xeランプを照射しガスクロマトグラフィーにより水素発生量を測定した。 作製したFeOOHはpH2という酸性条件下で高い水素性性能を示し、光触媒の標準的な試料として用いられている酸化チタン(Degussa p25)と比べ高い値を示した。水素生成量と反応容器内に含まれる酸素量を時間に対して調査したところ、水素が生成するにつれて酸素量が減少していることが分かり、無酸素条件下では水素生成能が低下した。これまでの結果からFeOOHが自身の光還元によりFe, FeO, Fe3O4などに変換され、これらの鉄系物質が酸性条件下で水素を発生してFe3+に戻り、反応後のFe3+は酸素と反応し再びFeOOHが生成されると考えている。そのため無酸素条件下ではFe3+がFeOOHに戻ることができず、水素発生能が低下したと考えられる。また、メタノール以外のエタノール、プロパノール、ヘキサノールなどのアルコールを用いた場合でも水素を得られることが分かった。本研究の結果はから、我々の身の回りにある錆(FeOOH)と太陽の光から水素を持続的に得る新しい水素生成システムを構築できる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の再現性の確認、および結晶相、反応環境条件下による影響を効率よく調査できたことで、メカニズムを解明する次の段階へと研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
・水素生成能の評価 メカニズムを明らかにするために、同位体試薬(D16O2、H218O、メタノール-d4)またはガス(18O2)を用いた実験を行う。光反応セルから生成したガスを評価するガスクロマトグラフィー(GC-TCD)および質量分析ガスクロマトグラフィー(GC-MS)までの経路を連続的に繋ぎ、正確に定量することが重要であるため、光反応セルの設計および実験系の構築を行う。また、これまでの予備実験により、FeOOHの光照射による水素生成活性は、光反応セル内の雰囲気(温度、圧力、酸素濃度、水溶液のpH、水溶液中に含まれるメタノール濃度)や照射する光の波長と強度に影響を受けることが分かっている。そこで、これらの条件を変えて水素生成能を調査し、最適な条件を見つけ出す。 ・波長依存性 上記の水素生成能の評価で得た最適条件下において、カットフィルターやバンドパスフィルターを用いて単波長をつくり、その時の水素生成量から量子効率を算出し、作製したFeOOHの波長依存性を明らかにする。
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