研究課題/領域番号 |
16H04503
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
川村 みどり 北見工業大学, 工学部, 教授 (70261401)
|
研究分担者 |
木場 隆之 北見工業大学, 工学部, 助教 (40567236)
室谷 裕志 東海大学, 工学部, 教授 (70366079)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 極薄金属表面層 / 銀薄膜 / 光学特性 / 安定性 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、我々が以前開発した銀薄膜に極薄表界面層を積層させることにより加熱しても凝集せず電気抵抗率も保持できる高安定銀薄膜の光学特性を調査することである。前年度は、スパッタリング法と真空蒸着法を用いて、代表的な系であるアルミ表面層積層銀薄膜構造を作製し、表面積層金属膜厚の反射率に及ぼす影響を明らかにした。 今年度は、主に真空蒸着法を用いて作製した、1または3nmのアルミ表面層を積層した銀薄膜試料に対し、恒温恒湿器内で環境試験を実施し、その耐久性を調査し、銀単層膜との比較を行った。環境試験の条件はA:温度40℃、相対湿度90%、B: 温度85℃、相対湿度85%の2つで、それぞれ2週間保持して表面形態、電気抵抗率、反射率等の変化を調査した。このうち、Aは相対的には穏やかな条件だが、日本工業規格で光学コーティングの環境試験中でも最も厳しい「過酷な屋外環境下での使用基準」を満たすものである。 Aの条件下での環境試験の結果、積層構造試料では電気抵抗率変化が抑制されている一方、銀単層膜では著しい変化(劣化)が認められた。これは、光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡を用いて調査した表面形態の変化の有無と対応する結果であった。また、銀単層膜では正反射率が大幅に低下するにのに対し、積層構造試料では、ほぼ変化が認められなかった。従って、アルミ積層試料は、銀単層と同様の高反射率特性をアズデポでも温度40℃、相対湿度90%での環境試験後でも維持できることを見出した。 一方、電子部品等の評価に用いられるより厳しいBの条件で加速試験をした結果、アルミ積層試料において、表面形態は平坦性が保たれていたが、表面にムラが生じている箇所も認められた。X線光電子分光法により元素分析を行った結果、部分的には薄い硫化銀層が形成しているものと推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀薄膜と同等の反射率を有するアルミ積層銀薄膜において、光学コーティングに求められる最も厳しい条件での環境試験を実施した結果、極薄であってもアルミ積層の効果が十分に認められるという知見が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度からの継続項目として、引き続き、新規な表面層金属を用いて積層構造を作製し、そのアズデポ状態での反射率を調査する。これまで、アルミやチタンの積層結果から得られた知見を確認する予定である。また、光学特性に関しても本実験で作製している膜の高反射率という特徴について、反射率の角度依存性の測定から更に知見を得ようと考えている。 アルミ以外の表面層金属を用いた積層構造における耐環境性及び光学特性を調査する。また、今年度は最終年であるので、アズデポでの特性および環境耐性にも優れている高安定銀薄膜の最適構造について結論づけたい。
|