研究課題
我々は、これまでに銀薄膜に極薄表界面層を積層させることにより、加熱しても凝集せず、低電気抵抗率を保持できる高安定銀薄膜を開発してきた。同膜において、優れた反射率特性も確認できれば、高安定なリフレクターとして実用化が可能となる。そこで、本研究課題の目的は、高安定銀薄膜の光学特性を評価し、極薄表面層の存在による反射率への影響やそれによる環境耐性の向上の効果を明らかにすることである。前年度に引き続き、真空蒸着法とスパッタリング法を用いて各種高安定銀薄膜の作製を実施し、環境耐性の調査・比較を行った。スパッタリング法では、チタン表面層の積層も実施し、アルミ表面層と比較した。アルミ表面層を1または3nm積層した銀薄膜試料を恒温恒湿器内で環境試験を実施し、その耐久性を調査した。これらの積層構造は、銀単層膜と反射特性が実施した環境試験の条件は日本工業規格で光学コーティングの環境試験中、高温高湿条件として定められている温度40℃、相対湿度90%において、8時間または16時間保持した。その後、表面形態、電気抵抗率、反射率等の変化を調査した。環境試験による凝集抑制効果においては、アルミ・チタンそれぞれ1、3nmで何れも高い効果が認められ、表面粗さにも変化がなかった。正反射率については、表面層が完全に酸化物となっている1nmの方が高い値を示した。また、拡散反射率は、表面粗さが低いことと対応して銀単層膜に比べてかなり低い値を示した。アルミとチタンを比較すると、酸化物の光学特性からアルミの優位性が確認された。本研究で調べた構造の中では、アルミ1nm積層構造が最も優れた光学特性を保持できることが判明した。表面保護膜としては、最薄である本構造においても、実用化を判断する高温高湿条件において規定された数値を満たすことができ、実用化が可能であるという興味深い結果が得られた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Applied Surface Science
巻: 478 ページ: 49-53
doi.org/10.1016/j.apsusc.2019.01.175
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi.org/10.7567/1347-4065/ab2007