研究課題/領域番号 |
16H04504
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三木 寛之 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (80325943)
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研究分担者 |
宮崎 孝道 東北大学, 工学研究科, 技術一般職員 (20422090)
小助川 博之 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (00709157)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / 複合材料・物性 / 機械材料・材料力学 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
本研究は純金属、異種金属あるいは金属と異種材料の混合粉を動的な粒動接合プロセスを用いることによって、常温大気中で固化成形する材料プロセスに関するものである。この粒動接合プロセスは金型に充填した粉末原料に一軸圧縮を与えて保持し、その垂直方向にせん断力を同時に与える”圧縮力とせん断力の同時作用”によって、加熱あるいは通電を必要とせずに粒子が固化し成形される点が特徴である。この手法によって成形された材料は機械的強度や摺動安定性が向上し、結晶配向性等の材料特性や新規機能性の付与が期待されることから、本研究においては粒動接合プロセスを用いた新たな巨大ひずみ加工による粉末成型技術を確立する。さらに、このプロセスにおける粉末の固化メカニズムを明らかにするために①粉体接合ならびに結晶粒微細化機構、②合金あるいは複合材料の微細結晶粒形成プロセスを系統的に分析し、粒動接合に基づく新規な材料の創製を目指している。
本研究では平成28年度に金属粉の粒動接合プロセスによる固化過程を定量化し、成型材の機械的特性、材料特性評価を実施した。さらに、ここで抽出された固化条件を摺動パラメータとして再現し、せん断法による固化ならびに粒子間接合過程を検討した。平成29年度は上記課題を異なる金属の粉末の接合プロセスに展開し、結晶粒微細化条件などの特性・機能性との関係性を定量的に評価した。また、金属粉末と異種金属混合粉、あるいは非金属粉との混合粉を固化し、結晶組織や機械的特性、接合化について①粒動接合プロセスによる薄板成型における成型条件と微細構造の関係性評価②粒動接合プロセスを用いた合金作製手法の確立について成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は平成28年度に得られた固化条件をパラメータとして金属粉末の接合プロセスに展開し、結晶粒微細化条件などの特性・機能性との関係性を定量的に評価した。これに加えて、粒動接合プロセスを用いた合金作製手法を確立することを目指していたが、平成29年12月に実施した加熱条件設定のための予備実験において異種金属間の合金化に必要な温度が、当初想定していた100℃~200℃の温度範囲ではなく、200℃以上の高温領域での加熱成形が必要であることが判明し、平成29年度の補助事業を6か月延長し、加熱プロセスの確立のための予備実験と加熱成形実験を行った。
その結果、純Alと純Cu粉末について①成形プロセスではせん断ひずみの付与により内部組織の欠陥が減少し高密度な成形体が得られる②単軸圧粉体およびせん断ひずみの不十分な付与では原料粉末が十分に変形せず一様に固化しない③十分に固化するとインデンテーション硬さが増加することが明らかになり、常温圧縮せん断法による金属粉末粒子の固化成形プロセスでは、原料粉末が十分に接合に至るために圧縮応力に加えてせん断ひずみ量が必要であり、硬質な材料においては必要なせん断ひずみ量が増加することが示された。また、温間プロセスによる合金化技術の開発を目的として、銅と亜鉛の混合粉末に室温(20℃)~250℃の温度領域における成形を試みた結果、①室温において圧縮応力とせん断力を上昇させると成形体の固化成形が進行する②数百度の温度下で圧縮せん断法を行った場合、亜鉛が軟化し、銅粒子が変形・接合するために必要な力が十分に伝わらないため、室温より成形性が良くない③圧縮せん断法を室温と数百度の温間の2段階で行うと,粒子間の拡散が進み、銅粒子と亜鉛粒子の間に新たに合金(真鍮)層が形成されることが明らかになった。
以上より、補助事業の延長により当初目標を達成することが出来たものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成28年度ならびに平成29年度の研究成果に基づき、粒動接合プロセスによる複合材料設計技術について検討を行う。具体的な実施内容は以下のとおりである。
①摺動プロセスに基づく成形体設計及び微細構造分析 摺動プロセスによって形成される微結晶粒組織の詳細分析を行い、摩擦挙動と結晶粒微細化の関係性を評価する。ここでは、材料の初期状態や試験条件によるの結晶粒変化の違いや、金属種や混合比による成型性の違いなどを考慮したミクロスケール評価(走査電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、透過電子顕微鏡(TEM) )を実施し、摺動プロセスを粒動接合の観点で定量的に評価する。 ②粒動接合プロセスを利用した合金化および複合材料粉おける固化プロセスの解明 これまでは常温大気中で原料粉末の固化成型を行ってきたが、装置に雰囲気制御加熱装置を導入し、粉体の酸化を抑制するあるいは粒子間の原子拡散を促す温度範囲での粒動接合プロセスを行う。ここでは、多相あるいは混合粉体を用いて固化成形体を作製し、成形材の合金化あるいは複合化について検証する。さらに、①と同様に生成された固化材の微細構造分析を実施し、金属種およびその組み合わせ、固化成型条件が合金化・複合化に及ぼす影響を総合的に考察し、固化パラメータと結晶粒微細化条件との相関について検討する。
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