研究課題
平成29年度は、昨年度に引き続き、電子ビーム励起ソリューションプラズマ表面処理プロセスシステムの開発、電子ビーム励起ソリューションプラズマの創製、そのプラズマ診断を進めた。また、その材料プロセスへの応用としての液中の微粒子のダイナミクスの制御への応用を進めた。具体的成果として、(1)高圧ガス状態、液体状態などの高密度媒質条件でのCO2、N2、Ar、シリコンオイル、アルコールでの電子ビーム励起プラズマの生成再実験を行ない、それらの発光分光測定、電圧・電流測定、レーザーラマン分光、高速カメラ測定と合わせて、これらの多様な媒質中で電界放出型表面誘電体バリア放電の生成を示すとともに、その生成範囲(開始電圧)の大小がパッションカーブを用いて定性的に説明できること、また、その発光が制動放射に起因し、それらの電子温度が0.2eVでほぼ一定であることなどを確定し、論文としてまとめた。(2)応用研究として、液中での微粒子のダイナミクスの制御を進めた。数十μm程度の大きさのポリマー微粒子にプラズマによる電荷の付与、電界によるダイナミクスの制御の研究を進め、微粒子の配列、除去などへの応用を試みた。高速カメラによる印加電圧下での微粒子のダイナミズムの実験から、微粒子の速度が粒径に比例する領域の存在を確定し、計算シミュレーションから、表面積に比例した力(すなわち、表面積に比例した帯電量による)の存在が示され、運動の支配ファクターとして、帯電に起因するクーロン力が示唆された。さらにまた同様の計算シミュレーションより、10nm~1mmの粒径の範囲では、このクーロン力は重力やブラウン運動の力よりも支配的となり、本クーロン力を用いた微粒子の分離の可能性が示めされた。以上の研究も論文としてまとめられた。その他、高圧ガスの放電、微粒子の帯電に関する比較研究、関連研究も合わせて行った。
2: おおむね順調に進展している
研究成果をまとめた論文を複数出版できるとともに、本研究内容で講演発表した学生が講演奨励賞を受賞するなど高い評価を受けている。
最終年度である本年度は、昨年度に引き続き、電子ビーム励起ソリューションプラズマ表面処理プロセスシステムの開発、電子ビーム励起ソリューションプラズマの創製、そのプラズマ診断を進め基礎研究の総まとめを行う。また、その材料プロセスへの応用としての液中の微粒子のダイナミクスの制御への応用も継続して進めて行く。具体的には、(1)電子ビーム励起ソリューションプラズマ表面処理システムの開発とソリューションプラズマの創製:本グループが見出した新しい発生原理である”電界放出型の電子ビーム励起法による表面誘電体バリア放電プラズマ”を用いる。(1A)電極デバイスの作製:電極作製プリンターを用いた、制御されたドット型の電極の作製を研究を進めていく。(1B)アルコール、液体窒素などを対象にして各種のプロセス条件(温度、電源周波数、電圧、電極方式など)でのプラズマの発生を更に進める。(2)プラズマ診断:上記の各種のプラズマ状態の診断(電子密度、温度の測定など)について、発光分光測定、電圧・電流測定、レーザーラマン分光、高速カメラ測定を継続して進め全体的な総まとめを行う。(3)プロセス応用:昨年度、本格的に進めた、上記のシステム、プラズマを用いた、応用研究として、液中での微粒子のダイナミクスの制御の総仕上げを試みる。実験には高速カメラを中心にして行い、また計算シミュレーションも併せて進める。さらにまた反応性の再チェック、他のソリュウションプラズマの比較研究にもトライする。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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