研究課題/領域番号 |
16H04507
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
井原 郁夫 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80203280)
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研究分担者 |
松谷 巌 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (00514465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波 / サーモメトリ / 不均質構造体 / 熱流束 / 温度分布 / 非破壊計測 / 界面 / 表面 |
研究実績の概要 |
本研究は、非均質物体の内部や界面の温度プロファイルをリアルタイムかつ定量的に計測・モニタリングするための局所的超音波サーモメトリを創成するとともに、この手法の有効性を実証することを目的とする。このような革新的計測手法を開発することで、従来技術では成し得なかった複雑構造材(例えば、膜構造材料、複合材料、コーティング薄膜、MEMSなど)の内部や界面の非破壊的温度計測の実現を目指す。 H29年度においては、所期の目標を達成するために、2次元構造を有する構造体に対する超音波サーモメトリの適用を試みた。まず、研究代表者は既に超音波法を用いた1次元温度分布プロファイリングを実現しているため、この技術に基づいて2次元温度分布の簡便な同定手法を提案した。次いで、2次元構造または2次元温度場に対して64チャンネルのアレイ探触子による超音波パルスエコー測定を実施した。鋼材について検討した結果、各チャンネルの超音波RF波形信号は一様ではなくSN比に差が現れたため、現行のアレイ探触子の使用は適切ではないと判断し、アレイの代用としてレーザドップラー振動計を活用したレーザ走査による2次元超音波計測システムを構築した。さらに、多層構造体の温度プロファイリングにおいて欠かせない材料界面の界面温度、界面近傍の温度プロファイル、界面に流入する熱流束、接触熱抵抗を定量的に同定するための逆解析手法を構築し、異材接合材(拡散接合)を用いた検証実験により、超音波サーモメトリの有用性を検証した。また、3次元超音波伝搬シミュレーションにより漏洩表面波(Scholte波)の解析を行い、サーモメトリへの適用を検討した。さらに、極局所領域の計測を目指した近接場光の活用についても検討し、エバネッセント光による超音波励起に関する検証実験を行った。次年度はこれらを駆使した2次元・局所領域の温度プロファイリングを試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非均質物体(多層構造体など)への超音波サーモメトリの適用に際しては、まず、その対象物の熱伝達・熱伝導モデリングとそれに適した測定手法および解析手法の構築が不可欠である。H29年度は、2次元温度場への適用を想定し、その空間内の超音波パルスエコー計測を実現するために、レーザドップラー振動計を活用したレーザ走査による2次元超音波計測システムを構築した。アレイ探触子の使用については断念したが、それに変わるレーザ走査手法が構築できたことで、2次元構造物(多層構造体を含む)への超音波計測が可能となった。また、多層構造体の温度プロファイリングにおいて欠かせない材料界面の界面温度、界面近傍の温度プロファイル、界面に流入する熱流束を定量的に同定するための逆解析手法を構築し、異材接合材(拡散接合)を用いた検証実験により、超音波サーモメトリの有用性が検証できたことで、H29年度の所期の目標の一つは概ね達成できたと判断できる。 また、3次元超音波伝搬シミュレーションを用いることでこれまで比較的困難であった波動伝播挙動、例えば漏洩表面波(Scholte波)の解析が可能となったため、そのような波を駆使した表面・界面のサーモメトリの開発が効果的に実施されると考えられる。さらに、エバネッセント光による超音波励起に関する検証実験を行い、その可能性が実証されたことで、局所領域の超音波計測に関する新たな展開も期待できる。これらの成果や知見は超音波サーモメトリによる局所領域の温度プロファイリングにおいて有益となることから、当該年度の研究は概ね順調に進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度においては、これまでに得られた知見を基に、薄材、界面ならびに微小構造への超音波サーモメトリの適用について検討する。まず、局所領域計測を実施するための新たな手法としてスタイラスプローブの活用について、その有用性について実験を交えて検証する。極細導波棒を介した局所的パルスエコーまたはピッチキャッチ計測を駆使して、(1)異種材界面およびその近傍の温度と温度プロファイルならびに熱流束の定量評価、(2) 表面波による薄層(波長以下の領域)の温度計測、(3) 異種材料界面(または固液界面)を伝搬する漏洩界面波による界面の温度計測、を試みる。このようなスタイラスプローブの使用に際しては所謂「遅れエコー」による問題が生じることが予想されるが、これは井原(研究代表者)らが培ってきた高SN比超音波バッファーロッド法の設計ノウハウ(申請書8ページ記載の特許(23)(30)、7ページの論文(13))を活かすことで、その問題を克服できると考える。また、当該プローブの最適設計に際しては3次元波動伝播シミュレーションを活用した材料選択・形状設計を行う。対象材料には鋼などの金属のみならず樹脂(溶融樹脂を含む)を用いる予定である。なお、前年度の結果を踏まえて、アレイ型センサに代えてレーザ操作による2次元または3次元温度計測の可能な計測システムを構築し、その有用性を検証する予定である。さらに、極微細構造に対する超音波サーモメトリのアプローチとしては近接場光の活用についても検討する。極細ニードル先端から漏洩する近接場光を利用した波長以下の空間分解能でのパルスエコー計測を試みる。この光音響計測の適用は挑戦的な試みであるが、現有設備を活用して井原と松谷(研究分担者)が実施する。上述のアプローチを通じて、局所領域の温度プロファイリングの実現可能性、有用性およびその適用限界を見極める。
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