リチウムイオン電池のさらなる高エネルギー密度化のために、従来の有機溶媒系電解液に替わり得る電気化学的安定性に優れた非溶媒系の固体電解質の開発が強く望まれている。LiBH4を始めとする無機水素化物は、イオン伝導特性と電気化学的安定性に優れるため、固体電解質として利用できる可能性が高い。 クロソ型錯イオンBnHnを有するナトリウム系錯体水素化物のNa2B10H10とNa2B12H12は、どちらも単斜晶から立方晶への構造相転移に伴って高速ナトリウムイオン伝導を示すため、次世代蓄電池として注目される全固体ナトリウム二次電池を実現するための固体電解質としての応用が期待される。しかし、構造相転移温度以下ではナトリウムイオン伝導率が低いため、構造相転移温度以下でのイオン伝導率改善が課題の一つとして挙げられていた。2017年度までの取り組みから、クロソ型錯イオンBnHnと価数・水素配位数・イオン半径が異なる錯イオンNH2とを共存させることにより、Na2B10H10とNa2B12H12の室温でのナトリウムイオン伝導率が3~4桁増大することを報告していた。2018年度は本系に対して引き続き評価を進め、以下の成果を得た。 ・BnHn/NH2の混合比率の最適化を行った結果、B10H10 : NH2 = 3 : 1、B12H12 : NH2 = 1 : 1のときに最も室温でのナトリウムイオン伝導率が高くなることを明らかにした。 ・結晶構造解析を目的として室温での中性子回折実験および高温X線回折実験を行った。現在データ解析中である。 ・高温ラマン分光実験および示差熱天秤/質量分析により、水素放出過程においてまずはNH2の分解が優先的に進行し、その後BnHnが分解することを明らかにした。 ・BnHn中の水素量を変化させることにより、ナトリウムイオン伝導率を向上させることが可能であることを見出した。
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