研究課題/領域番号 |
16H04519
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
葛巻 徹 東海大学, 工学部, 教授 (50396909)
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研究分担者 |
鳥越 甲順 福井医療大学, 保健医療学部, 教授 (50126603)
中瀬 順介 金沢大学, 附属病院, 助教 (50584843)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体材料 / リガメントゲル / 人工靭帯 / 材料工学 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究では、ラビットの断裂した靭帯からフィルムモデル法によってゲル状分泌組織(リガメントゲル)を形成し、これに張力を印加することにより靭帯様再生組織の形成を試みた。リガメントゲルの再生時に親靭帯表面の滑膜を除去することで、得られたリガメントゲルに対する張力印加で靭帯様組織が再生可能であることを明らかにした。しかしながら、形成されたリガメントゲルは組織再生・評価実験には問題ないものの、再生組織の強度評価やその後の移植への利用を考慮すると十分な量を確保することが難しかった。そこで本実験では比較的大型の分泌組織形成が期待できるラビットの断裂腱から採取した分泌組織(テンドンゲル)の成熟度と張力印加による再生組織を観察し、マウスの実験例と比較することでその組織の特徴づけを行った。具体的には張力印加前後のテンドンゲル試料に対して原子間力顕微鏡(AFM)による組織観察と赤外分光測定の全反射(ATR法)による構造解析を行った。 ラビットの片端10日目テンドンゲルに対する張力印加では、ゲル組織はマウスと同様にひも状に細く伸長した。しかし、AFMによる表面観察では太く配向したコラーゲン線維が見られず、ATRによる構造解析でも架橋を示すピークが見られなかった。一方、ラビットの片端3日目テンドンゲル試料に対して張力印加を行ったところ、3日目試料は10日目試料とは異なり、細くひも状に伸長した。また、表面観察において太いコラーゲン線維が観察でき、ATRによる構造解析でもコラーゲン架橋を示すピークが確認できた。これらの結果は、マウスのテンドンゲルで得られた実験結果と異なるものであり、ラビットは生体内でのテンドンゲルの成熟が早く、3日目の生体内温存で既に張力印加の適切な時期を迎えていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスとラビットとの比較によって、テンドンゲルへの適切な張力印加時期が異なることを明らかにした。これは形成される生体分泌組織への適切な張力印加時期が種によって異なることを示唆する重要な知見である。張力印加による靭帯様組織の再生において、ラビットからゲル組織を採取すべき適切な成熟時期を見極めて再生実験を行い、再生組織の強度や移植に適した試料形態の形成へとステップアップする段階に来ている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度前半において、ラビットのリガメントゲル、テンドンゲルの組織再生における適切な張力印加時期を見極めるため、必要な試料数を確保して張力印加と組織解析の系統的な実験を行う。またコラーゲン線維組織が形成されたそれぞれの再生組織について引張強度の評価を行う。移植適用可能なサイズの靭帯類似組織の形成については、複数のゲル組織から再生した組織を組み合わせて形成することが可能か否かを検討する。これらの結果を踏まえて、研究グループ内で議論し、本年度内に形成した再生組織を用いて移植実験に取り組む計画である。
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