研究課題/領域番号 |
16H04520
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
赤堀 俊和 名城大学, 理工学部, 准教授 (00324492)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | デンタルマテリアル / 銀合金 / ミクロ組織 / 力学的特性 |
研究実績の概要 |
歯科補綴物用金属材料であるAg-Pd-Cu-Au系合金(金銀パラジウム合金)は、日本国内において最も用いられている貴金属合金の1つである。従来、その応用において、同系合金に対して固溶化時効処理を施して力学的特性を向上させているが、最近、比較的高温での単一熱処理により時効処理に匹敵する力学的特性を示すことが報告されている。そこで、本研究では、近年、新しく研究開発された金銀パラジウム合金の一つであるAg-20Pd-17.7Cu-12Au合金(G12)に各温度で単一熱処理を施した後のミクロ組織と力学的特性の関係について調査・検討した。 G12のミクロ組織は、溶体化温度1113 K以外の全試料においてCu richであるα1相、Ag rich相であるα2相、PdCu系金属化合物であるβ相の3相から構成されていることが確認できた。1113 Kのみβ相が存在せず2相のみで構成されていた。受け入れまま状態と溶体化時効処理(STA)を比較すると、ミクロ組織の著しい違いが確認できた。これは、STAを施すことによって加工ひずみが除去され、さらに再結晶化したためと考えられる。また、STAではα1相の球状化が確認できた。1023 KはSTAとほぼ同様なミクロ組織を呈していたが、α1相とα2相との境界が不明瞭なことが確認できた。これは、α1相が粗大化しCu濃度のゆらぎ領域が生じたためと考えられる。1123 K~1173 Kは単一熱処理温度の上昇とともにα1相とα2相比が変化し、α2相の粗大等軸化およびα1相とβ相の共晶組織化が確認できた。これは、α1相およびβ相はCu濃度の高い相であり、この2相が部分融解し、α2相の粒界に再析出したためと考えられる。 G12の機械的強度は熱処理温度の上昇に伴い、硬化領域、軟化領域および再硬化領域を示し、硬さおよび引張強さはほぼ同様な変化を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本供試材であるG12に対して、系統的に熱処理温度を変えた場合におけるミクロ組織変化と機械的強度の関係について詳細に明らかにした。熱処理温度条件によっては、硬化領域、軟化領域および再硬化領域を示すことを明らかにし、機械的強度(硬さおよび引張強度)とミクロ組織因子による関連付けが可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、下記に示すミクロ組織を変化させたG12を用いた疲労試験および耐食性試験を重点的に行い、今まで得られた研究成果を総括する予定である。 ・疲労試験:種々の溶体化熱処理を施した試料を機械加工によって疲労試験片を作製し、容量9.8 kNのMTS社製電気油圧サーボ式疲労試験機を用いて、周波数10 Hz、応力比R=0.1の引張-引張条件および室温の大気中で行う。 ・耐食性試験:種々の溶体化熱処理を施した試料に対して、試験溶液を3mass%NaCl水溶液とし、対極(C.E.)、参照極(R.E.)、温度計及び電極を浸漬後600 s放置後、開回回路電位に出力した初期電位を自然侵漬電位として、走査速度1.0 mVs-1で1.1 Vまで走査する。自然侵漬電位および立ち上がり電位に近似線を挿入し、交点における電位を腐食電位とする。
|