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2016 年度 実績報告書

セラミック半導体の光応答を利用した細胞培養デバイスの開発

研究課題

研究課題/領域番号 16H04521
研究機関関西大学

研究代表者

上田 正人  関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (40362660)

研究分担者 松垣 あいら  大阪大学, 工学研究科, 助教 (10592529)
池田 勝彦  関西大学, 化学生命工学部, 教授 (20184434)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード生体材料 / セラミックス / 光化学反応
研究実績の概要

§1細胞培養デバイスの作製:ゾル・ゲル法を利用して,SiO2基板にアナターゼ型TiO2膜を合成した。TiO2表面で細胞を培養し,SiO2側から光照射を行う背面照射型デバイスとした。また,化学・水熱処理を利用して,純Ti基板の片面にアナターゼ型TiO2膜を合成した。純Ti表面で細胞を培養し,TiO2側はSiO2板を利用してHanks液を封入することで,背面照射型デバイスとした。さらに,化学・水熱処理を利用して,純Ti基板にペロブスカイト型SrTiO3膜を合成した後,酸性水溶液で表面からSrをリーチングした光応答膜も合成した。
§2合成膜のキャラクタリゼーション:TiO2/SiO2型デバイスの光透過スペクトルを測定したところ, TiO2層で波長約390 nm以下の光が吸収され,細胞は紫外光に曝されないことが示された。紫外光(波長365 nm,5 Wm-2)照射下では約37 nAmm-2の光電流が観察された。Ti/TiO2/Hanks/SiO2型デバイスでは,紫外光を照射すると約0.3 Vの起電力が発生した。紫外光照射により,SrTiO3膜で発生した起電力は小さかったが,酸性水溶液によるリーチング処理を施すと著しく増大し,約0.35 Vに達した。
§3細胞の接着・増殖・剥離挙動と光照射:初代骨芽細胞を用いて各種細胞実験を行った。得られた主要な結果は下記の通り。(1) TiO2/SiO2型デバイスで,光を照射した状態で細胞を培養すると細胞の接着は忌避された。(2) TiO2/SiO2型デバイスで,細胞を暗所下で培養した後,光を照射すると細胞は剥離した。しかしながら,2h照射した場合も75%の細胞は残留し,その効率は十分とは言えなかった。(3)Ti/TiO2/Hanks/SiO2型デバイスにおいても,上記の照射パターンで,細胞接着の忌避,接着細胞の剥離現象が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

(i) スパッタリング法,(ii) ゾル・ゲル法,(iii) 化学・水熱処理法を利用した,Ti基板,SiO2基板上への光応答セラミックス(TiO2,ATiO3など)の成膜,その合成膜のキャラクタリゼーション,細胞の接着・増殖・剥離挙動と光照射の関係の調査を予定していた。いずれもほぼ予定通り遂行できた。スパッタリング法による成膜に関しては,装置の立ち上げ,ならびに成膜条件の最適化に留まった。しかしながら,H29年度以降に予定していた光応答セラミックス半導体のヘテロ接合に関する実験を繰り上げて実施できた。予備実験しか実施できていないが,TiO2/SrTiO3のヘテロ界面を構築することにより,光照射下で発生する起電力が増大したことから,同手法により光応答の鋭敏化が可能であることが示唆された。細胞実験に関しては,上述した通り,光照射をトリガーとした細胞の剥離効率が十分ではない結果が得られた。しかしながら,これは想定内の結果であり,大きな問題ではない。TiO2/SrTiO3のヘテロ界面やTiO2への不純物ドーピングによる可視光吸収(H29年度実施予定)を利用することにより,改善されることが期待される。
このように,遂行した実験では,ほぼ想定した結果が得られており,課題が残った箇所についても,既に解決の方向性が見えていることから,本研究は非常に順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

§1細胞培養デバイスの作製:スパッタリング法により光応答セラミックス膜を合成し,背面照射型の細胞培養デバイスを作製する。同手法は,基板を選ばず,非常に均質な薄膜を比較的容易に合成できるため,今後,本研究において主軸となると考えている。光電流などの光応答性に加え,光吸収特性にも注目し,膜厚を初めとする成膜条件を最適化する。
§2 光応答セラミックスへの不純物ドーピング:まずは,(i) TiO2に対する不純物ドーピングを行う。例えば,Ti(4価)サイトにNb(5価)を置換することで,不純物ドーピングに起因した不純物準位を形成させ,可視光応答性を付与する。スパッタリング法,ゾル・ゲル法,化学処理で合成した低結晶性のTiO2膜にNbイオンを含有するアルカリ溶液を用いた水熱処理を施すことでNbドープTiO2膜を合成する。スパッタリング法では,Ar-O2雰囲気下で,TiとNbを交互にスパッタリングすることでもTiO2膜へのNbドーピングを試みる。次に,(ii) ATiO3に対する不純物ドーピングも行う。Ca(OH)2,Ba(OH)2などにドーパント(Nb源など)を添加した水溶液中で低結晶性のTiO2膜に水熱処理を施し,Aサイト,Tiサイトに不純物がドーピングされた膜を合成する。不純物の置換サイトが2種あることから,バラエティに富んだ物質設計が可能である。ドーパントを適切に選択することで,可視光応答性のみならず,n型化,p型化された半導体膜を合成する。
§3合成膜のキャラクタリゼーションと細胞実験:上記合成膜で発生する光電流や起電力などを評価する。構築した細胞培養デバイス上で細胞の接着・増殖・剥離挙動と光照射の関係を調査する。H28年度に実施した細胞実験で課題となった光照射による接着細胞の剥離の効率を向上させることに特に注力する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 光応答細胞培養器における光応答性の鋭敏化2017

    • 著者名/発表者名
      上田正人,藤田智香,池田勝彦
    • 学会等名
      日本金属学会
    • 発表場所
      首都大学東京 南大沢キャンパス
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] 背面照射型のTi/TiO2/水溶液/SiO2光応答細胞培養器の試作2017

    • 著者名/発表者名
      藤田智香,上田正人,池田勝彦
    • 学会等名
      日本金属学会
    • 発表場所
      首都大学東京 南大沢キャンパス
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] 酸化チタンの光化学反応を利用した背面照射型細胞培養器の試作2016

    • 著者名/発表者名
      上田正人,池田勝彦,藤田智香
    • 学会等名
      日本バイオマテリアル学会シンポジウム2016
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2016-11-21 – 2016-11-22
  • [学会発表] Fabrication of Photo-Responsible Cell Culture Vessels using TiO2 film2016

    • 著者名/発表者名
      Masato Ueda, Chika Fujita, Masahiko Ikeda, Aira Matsugaki, Takayoshi Nakano
    • 学会等名
      PRICM9
    • 発表場所
      Kyoto International Conference Center
    • 年月日
      2016-08-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Utilisation of Photocatalytic Reaction of Titanium Dioxide in Biomedical Materials2016

    • 著者名/発表者名
      Masato Ueda, Masahiko Ikeda
    • 学会等名
      The 14th Korea / Japan International Symposium on Resources Recycling and Materials Science
    • 発表場所
      Gyeong Won Jae Ambassador, Incheon, South Korea
    • 年月日
      2016-06-07 – 2016-06-08
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Utilisation of Titanium dioxide for Photo-responsive Cell Vessels2016

    • 著者名/発表者名
      Chika Fujita, Yasuka Yoshida, Masato Ueda, Masahiko Ikeda
    • 学会等名
      The 14th Korea / Japan International Symposium on Resources Recycling and Materials Science
    • 発表場所
      Gyeong Won Jae Ambassador, Incheon, South Korea
    • 年月日
      2016-06-07 – 2016-06-08
    • 国際学会
  • [備考] 関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科 環境材料研究室

    • URL

      http://www.chemmater.kansai-u.ac.jp/ecmate/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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