研究課題/領域番号 |
16H04523
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
熊倉 浩明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 特命研究員 (90354307)
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研究分担者 |
長谷川 明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, グループリーダ (20354326)
野村 晃敬 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 研究員 (30746160)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーボンコート / 放電容量 / 放電サイクル特性 |
研究実績の概要 |
本年度は、LiFePO4電極材料に対して、コロネン添加量を系統的に変化させて炭素コートを試み、得られた炭素コート電極粉末を用いて電池を作製して電池特性を評価し、コロネン添加量と炭素コート膜厚や電池特性との関係を調査した。 ボールミルした電極材料粉末とC24H12を混合し、ガラス管に真空封入した。C24H12の添加量はLiFePO4に対して1wt%, 2wt%, 3wt%および4wt%とした。封入したガラス管はC24H12の分解温度以上である700oCで1時間熱処理した。 炭素コートした電極粉末の微細構造は、透過電顕ならびにX線回折によって炭素コートしない電極粉末と比較して評価した。透過電顕観察では、特に炭素コートの層厚とその均一性ならびにコート層の構造を調べた。炭素コート層厚はC24H12添加量とともに増大する傾向を示し、仕込み組成によって炭素コート層厚を有る程度制御出来ることが判った。また、生成した炭素コート層は全ての仕込み組成でアモルファス状であることが判明した。 作製した種々の炭素コート電極粉末を用いてリチウムイオン電池(ハーフセルならびにフルセル)を作製し、充・放電容量、充・放電レート、及びサイクル寿命などの性能を評価し、電池特性のC24H12添加量依存性について考察した。LiFePO4へのC24H12添加量とともに充・放電容量が増大し、3wt%添加で最大の容量が得られた。その放電容量は152mAh/gで理論値の91%である。この値は商用LFPを用いた電池の値159mAh/gよりも若干小さいが、これはわれわれが用いたLiFePO4粉末の粒径が大きいためと考えられ、今後より粒径の小さい電極粉末を用いることで、理論容量に近い容量が得られると考えられる。このように、我々の簡便なカーボンコート法が実用的に有望であることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に、6wt%のコロネン添加を試みたが、厚いアモルファスカーボン層が各ボロン粉末粒子の表面に形成されるとともに正電極粉末同士がカーボンによって結合することが判明した。また、電極に付着していないアモルファス状のカーボンがかなりの量存在し、これが電池の抵抗を大きくすると言う予期しない問題点の有ることが判明した。そこで、平成29年度は、コロネン量として6wt%よりも少ない1-4wt%とすることによってこれらの問題点を軽減することに成功し、LiFePO4正極を用いた場合の理論放電容量に近い電池特性を得ることに成功した。しかしながら正極粉末同士の結合が解消されたわけではない。この問題を解決するためには、カーボンコート法に対して種々の工夫を凝らす必要があると判断される。これによって研究の進捗状況は遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、LiFePO4電極材料に対してコロネン添加量を系統的に変化させて最適化するなどによって充放電特性をかなり改善することが出来た。しかしながらコロネンへの炭素コート処理においてはLiFePO4電極粉末が互いに凝集して粒の大きな塊となる傾向のあることも判明した。このようなLiFePO4粒子の凝集・粗大化を抑制することが可能となれば、さらなる電池特性が向上が期待できる。そこで、カーボンコートの工夫やコートした後の電極凝集粉末の分離等を試み、さらなる電池特性の向上を目指すこととしたい。 (1)<電極材料の炭素コーティングの工夫> ボールミルした電極材料粉末とC24H12を混合し、ガラス管に真空封入してC24H12の分解温度以上で熱処理する。この熱処理は短時間熱処理を数回に分けて行い、熱処理の間(室温)にガラス管に振動を与えて凝集電極粒子の分離を図る。また熱処理中にガラス管を回転させることを試み、これによる電極粒子の凝集抑制効果を調べる。 (2)<炭素コート電極粉末の構造解析、評価> 炭素コートした電極粉末の微細構造は、透過電顕ならびにX線回折によって炭素コートしない電極粉末と比較して評価する。X線回折では、熱処理時にC24H12が分解して得られる生成物が添加量や熱処理条件によってどのように変化するかを調査する。透過電顕観察では、特に上記の電極粒子凝集抑制効果に注目して粒径を評価し、合わせて炭素コートの層厚とその均一性ならびにコート層の構造を調べるとともに元素分析を行う。 (3)<LIBの試作と評価> (1)で得られた種々の炭素コート電極粉末を用いてLIBを作製し、充・放電容量、充・放電レート、及びサイクル寿命などの性能を評価し、電池特性の電極粒径依存性について考察する。これによって最適な電極への炭素コート法を求める。
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