疎水化ゼラチンによる血管新生メカニズムをin vitroにおいて明らかにする手法の一つとしてマクロファージ系細胞に種々のアルキル鎖長を有する疎水化ゼラチンを添加し、Tumor Necrosis Factor-alpha (TNF-alpha)の発現を定量した。疎水化ゼラチンを添加することによりTNF-alphaの発現は優位に増加し、長鎖長のアルキル基において比較的高い発現が観察されたことから、疎水化ゼラチンがリポポリサッカライド様の一部機能を有していることが示唆された。一方、血管新生の定量的in vivo評価法としてレーザードップラー血流計を用い、材料をマウス皮下埋入後における血管新生をイメージングにより定量した結果、材料埋入後1週間以内においては、in vitroの結果と同様にアルキル鎖長の導入に伴い、優位に血管新生が促進されることが明らかとなった。しかしながら、1週間後においては、血管新生作用はほとんど差がなくなったことから、疎水化ゼラチンが一時的に血管新生を促進し、血管新生に伴う酵素によりゼラチン分子が分解されることにより、血管新生作用が低下することが示唆された。また、材料および周辺組織の免疫染色を行った結果、CD31および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現がオリジナルと比較して優位に促進されていることから、疎水化ゼラチンがマクロファージ系細胞等に作用してTNF-alphaの発現を促し、更には細胞からのVEGFの発現を促した結果、血管新生が促進されるという分子メカニズムが存在する可能性が示唆された。
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