本研究は、特異なナノ構造によって高速超親水性・超撥水性を発現する耐食性アルミニウム材料を創製し、熱エネルギー変換デバイスへの応用に関する指針を得ることを目的としている。今年度は、超親水・超撥水アルミニウム材料の工業的な応用を志向し、実用的なアルミニウム合金を基板として用いることにより、超親水・超撥水を発現する研究を遂行した。 3004アルミニウム合金をピロリン酸によりアノード酸化すると、純アルミニウム表面と同様に無数のアルミナナノファイバーが生成するが、素地合金に含まれる不溶性の合金粒子が表面に多数析出し、アノード酸化時間とともに析出合金粒子量が多くなることがわかった。このようなナノファイバー形成試料は、合金析出の有無によらず水接触角10°以下の超親水性を発現した。一方、ナノファイバー形成試料にホスホン酸自己組織化単分子膜(SAM)を修飾すると、水接触角150°以上の超撥水性が発現した。しかしながら、過剰なアノード酸化によって不溶性合金粒子の析出量が増大すると、水接触角は減少に転じた。これは、不溶性合金粒子上にSAMが形成されず、試料表面が親水性となるためである。すなわち、合金粒子の析出が少ない、アノード酸化初期の表面が超撥水性の発現には重要であることがわかった。上述の超親水・超撥水アルミニウム合金は、それらの接触角が長時間維持され、安定な表面であることを確認した。また、1N30や8021など他の実用アルミニウム合金を用いても、同様の超親水性・超撥水性が発現することを見いだした。
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