研究課題/領域番号 |
16H04534
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
半谷 禎彦 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80361385)
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研究分担者 |
宇都宮 登雄 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60176708)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポーラスアルミニウム |
研究実績の概要 |
ポーラスアルミニウム(Al)は多孔質構造を有する素材であり,軽量なだけでなく緻密材にない優れた衝撃吸収性,断熱性,吸音性などを有している.そのため,自動車用部材への利用が期待されている.自動車用部材への利用に際して,衝撃吸収性を向上させるためには,圧縮特性を向上させることが重要である.しかし,純Al単体のポーラスAlでは圧縮特性の向上に限界がある.近年,原材料にAl合金を用いてポーラスAlを作製することにより,ポーラスAlの高強度化が図られている.しかし,Al合金によって作製されたポーラスAlは脆性的な破壊挙動となりプラトー領域で応力値の乱れが懸念される.そこで,高強度部と高延性部からなるネットワーク組織を形成させることにより,高強度と高延性を実現したポーラスAlの作製が期待される.一方で,圧縮特性の向上には気孔形態の制御が挙げられる.摩擦粉末焼結法は,摩擦熱を部分的に数十秒間加えることによって混合粉末を焼結させることができるため,雰囲気全体を長時間加熱する必要がない作製方法である.また,スペーサー除去時に外部熱源が不要なので省エネルギー化が実現できる. 今年度,摩擦粉末焼結法とは異なる焼結法であるスパークプラズマシンタリング法:SPS)を用いて気孔率70 %のCu添加ポーラスAlの作製を試みた.Al粒子の表面に高強度なAl-Cu金属間化合物を生成させ焼結させることにより,金属間化合物がネットワークのような組織となるため,高強度化と同時に延性的な破壊挙動を維持できることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出発材として,Pure Al粉末(粒径20 μm以下),Cu粉末(粒径1 μm以下)およびスペーサー粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(425-500 μm)を用いた.まず,Cu粉末とAl粉末とを混合した.そして,NaCl体積割合が70%となるようにNaCl粉末を混合し,混合粉末を作製した.上下から黒鉛パンチによって圧力を加え,放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering,SPS)装置(住友石炭鉱業株式会社製SPS‐1050)で焼結を行った.焼結条件は,室温から723 Kまで8 minで昇温させた後,773 Kまで2 minで昇温させた.その後,773 Kを10 min保持し,焼結体を作製した.焼結時,加圧力は50 MPaを保持した.得られた焼結体を静水中で水洗することでNaClを除去しポーラスAlを作製した.作製したポーラスAlは,クロスヘッド速度2 mm/minによる静的圧縮試験から圧縮特性の評価を行った. 得られたポーラスAlは,水洗時,焼結不足による崩れは見られなかった.また,NaClの偏析による崩れも見られなかった.X線CT画像から,得られたポーラスAlは,ほぼ均一な気孔分布を有していた.また,試験片中心までNaClが除去されていることが確認できた.加えて,除塩前と除塩後の質量から算出した除塩率からもNaClが除去されていることを確認した. 静的圧縮試験から得られた応力-ひずみ線図から,Cuの添加により0 vol%に比べ初期最大圧縮応力値が上昇し,高強度な応力-ひずみ曲線が得られることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
摩擦粉末焼結法と他の焼結法(スパークプラズマシンタリング法:SPS)の比較を行い,まとめとする.引き続き,X線CT撮像による非破壊観察の手法も構築する.また,他の傾斜機能ポーラスの開発も進め,汎用性の高い傾斜機能ポーラスアルミニウムの創製を目指す.
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