研究課題/領域番号 |
16H04536
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀川 敬太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50314836)
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研究分担者 |
小林 秀敏 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10205479)
山田 浩之 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 准教授 (80582907)
小椋 智 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90505984)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高ひずみ速度塑性変形 / 時効硬化 / アルミニウム合金 / 積層欠陥四面体 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
溶体化処理後に1段式火薬銃(SSPG)で高ひずみ速度変形(105s-1)を与えた6061アルミニウム合金の100 ℃および175 ℃における時効硬化曲線を調査した。溶体化処理後に変形(軸ひずみ50%)を与えた試料の硬さは,変形前と比べて硬度が2倍以上に上昇した。この変形による初期硬さの増分は変形速度の違いによらずほぼ同程度である。しかしながら,その後の100 ℃および175 ℃での時効硬化は,作用する変形速度の違いによって異なった。すなわち,高ひずみ速度で変形を作用させた場合では,いずれの時効温度においても,その後の時効最高硬さに増加がみられた。高ひずみ速度変形では,その後の100 ℃時効,あるいは175 ℃時効において,ピーク硬さ値として,それぞれ158 Hv, 136 Hvを示しており未加工材の時効による最高硬度(120 Hv)を上回った。またスプリットホプキンソン棒(SHPB)を用いて溶体化処理後の6061合金に高ひずみ速度変形を与えた場合についても傾向は類似であり,時効温度100℃と175℃においてピーク時効硬さが未加工材と比べて増加することも確認された。一方,低速度変形後の時効硬さの増分は小さく,得られる最高硬さは,100℃時効で123 Hv,175℃時効で122Hvであり,時効前に加工を行わなかった試料とほぼ同程度であった。 高分解能TEMを用いて高ひずみ速度変形を与えた溶体化直後の6061合金と7075合金の高倍率観察を行った結果、高ひずみ速度変形を作用させると,直径2-5nm程度の白色粒子が結晶粒内に高密度に観察されることが明らかになった。観察された白色粒子は高速度変形によって導入された格子欠陥であると判断することができる。TEMにおいて観察される格子欠陥は[110]からみた場合に三角形形状を呈しているため,三次元的な四面体構造を有していると判断できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたように、6061および7075アルミニウム合金に対する高ひずみ速度塑性変形の付与において、従来純アルミニウムで報告されたものと同様の積層欠陥四面体の大量生成を確認することができた。また、いずれの合金についても、その後の時効硬化特性に対して正の効果を持つことも明らかにできた。したがって、初年度の計画で想定している結果が得られているため、研究計画はほぼ順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度では、新たに純アルミニウムを試料として用いることで、高ひずみ速度塑性変形で導入される積層欠陥四面体の形成に及ぼす溶質元素の影響について調査する。また、その際のひずみ量、ひずみ速度を変えることで、最も高密度に積層欠陥四面体の大量生成が生じる条件を特定することで、積層欠陥四面体の形成機構を明らかにする。また、この高ひずみ速度塑性変形で導入される積層欠陥四面体を多量に含む組織に対して水素を導入した場合の力学的特性の評価を行う計画にしている。
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