研究課題/領域番号 |
16H04537
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松本 洋明 香川大学, 工学部, 准教授 (40372312)
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研究分担者 |
本間 智之 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50452082)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / チタン合金 / 組織制御 / 超塑性変形 / ヘテロ組織形成 |
研究実績の概要 |
28年度より継続して3つのテーマについて航空機チタン合金におけるヘテロ組織・準安定組織の高温塑性における特異性を解明・議論した。微細ヘテロ組織を有すTi-6Al-4V合金の変形特性では,試験条件を拡げ,650℃および750℃での引張試験温度で詳細な評価・解析を行った。その結果,いずれの試験温度においても中速域(0.001s-1)では等軸化率が少ないヘテロ組織形態の39%HR材にて優れた高温延性を示す事が分かった。ひずみ速度感受性指数も39%HR材にて変形過程で著しく増加する事が確認され,ヘテロ組織中の伸長粒にて動的再結晶が活性化され,これが応力緩和機構として効果的に作用し,変形中期・後期では微細粒域が増加するために粒界すべりが促進された事が示された。また変形の活性化エネルギーからも,その特異性は確認されている。また準安定なα’マルテンサイト相の高温変形特性に及ぼす影響について,α’量比を30%~80%変化させた(α+α’)duplex組織を形成し,同様なβの量比を有す(α+β)bimodal組織の変形挙動と比較しながら,第2相としてのα’相の役割・特異性を評価した。その結果,第2相としてのα’はβと比較して,低い流動応力特性,広い定常変形域および高いひずみ速度感受性指数(m値)に寄与する事が明らかとなり,より応力緩和機構補助として作用・貢献する事が明らかとなった。更に,Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金では超微細粒等軸組織(d=0.8μm)を形成して,準安定α単相状態もしくは平衡状態と比較してβ相を過剰に析出させた試料を作製して,それらの高温変形特性(700℃,800℃)に及ぼす影響を詳細に評価した。その結果,同様な超微細粒形態を有すにも関わらず,低速域では準安定α単相状態の方が,一方で中速・高速域では過剰β析出状態の方が高延性を示す事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
航空機分野においてチタン合金の超塑性 低温・高速化が強く要望されている。本研究では準安定状態(マルテンサイト組織)および微細ヘテロ組織(微細等軸粒と伸長粒の混在した不均質組織)を軸とした超塑性低温・高速化を実現する新しいコンセプトを提案する。研究ではTi-6Al-4V合金,Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金について①微細ヘテロ組織のプロセス設計と高温変形評価,②組織解析および③有限要素解析を駆使した変形機構の解析を行い,超塑性低温・高速化の新しい基礎原理の構築を目指す。 28年、29年の2か年では特に実験系の研究開発に注力して,Ti-6Al-4V合金,Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金について高温変形特性および組織変化過程を詳細に評価・解析する事で,Ti合金における微細ヘテロ組織・準安定組織における従来の平衡(α+β)から構成される均質組織と比較した高温塑性の特異性を解明した。30年度は基礎原理の解明を更に追及し,上記の③での有限要素解析を併用した理論的な追及を目指す。これらより進捗状況としては概ね順調に遂行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までの2か年でTi-6Al-4V合金,Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金について①微細ヘテロ 組織のプロセス設計と高温変形評価,②詳細な組織解析,③有限要素法(FEM)を駆使した変形機構の解析の3つを軸として,特に①②の実験的評価について注力・強化し,研究を遂行し,Ti合金におけるヘテロ組織・準安定組織の高温変形の特異性を実験的に明らかとした。30年度では①②についてより研究を深化させるとともに,③の有限要素解析シミュレーションを駆使した解析に注力して研究を展開する。具体的には3点,第1に28年度~29年度で得られた基礎的知見を基に,Ti合金材(Ti-6Al-4V合金,Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金)の世界最高レベルの低温・高速超塑性を実現するヘテロ・準安定組織制御を行う。第2に29年度から引き続き,ヘテロ組織・準安定組織を有すTi合金の高温塑性における特異性・基礎原理を多くの実験的評価を通し,解明・追及する。最後に第3には研究協力者と密に連携しながら, FEMと併せた粘塑性構成式を構築し,ヘテロ組織の変形の特異性を塑性構成式の観点からも明らかとする。
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