30年度では継続して3つのテーマ群について航空機チタン合金におけるヘテロ組織・準安定組織の高温塑性の特異性を解明した。第一にいくつかの(α+α’)duplex組織を出発組織としたTi-6Al-4V合金を熱間圧延加工制御で粗大α粒と超微細等軸(α+β)組織から構成される不均質組織を形成し,その変形特性を評価した。その結果,興味深い事に不均質超微細組織を呈す合金ではある特定の試験条件(温度,ひずみ速度)にて特異的に巨大な伸びが発現する事を見出し,この試験条件では均質な超微細粒組織を有す合金と比較しても良好な高温延性を示し,低温-高速超塑性が更に高度化される事を見出した。基礎的にもこの不均質組織形成した合金において変形過程で起きる粗大α粒中の連続動的再結晶が応力緩和機構補助として有効に作用するとともに,形成された連続動的再結晶粒の粒径が周辺の超微細粒の粒径と同様となる試験条件では変形後期においても変形機構として粒界すべりが連続的・継続的に進行し,そのために特定の試験条件にて特異的に巨大な伸びが発現する事を明らかとした。第二に粒度分布を変化し,また準安定状態としてβ量を平衡状態からの増減で調整したTi-6Al-2Sn-4Zr-2Mo合金について塑性特性を詳細に評価・解析し,高速域ではα/β界面すべりの影響が大きくβ量が過剰に析出した状態で優れた延性を示し,一方で低速域では動的なβ析出による応力緩和がより有効に作用するためにβ粒が少ない準安定組織にて優れた超塑性特性を示す事を明らかとした。第三に微細ヘテロ組織を有すTi合金の高温塑性構成式を構築し,マクロスケールのみならず,ミクロンスケールでの組織の不均質性のひずみ分布・応力分布の分配挙動を基礎的に室温変形での違いを結晶塑性・有限要素解析により評価し,ひずみの分配挙動はとりわけ粗大粒と微細粒の界面近傍で不均質に分配される事を見出した。
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