研究課題/領域番号 |
16H04545
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土井 俊哉 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (30315395)
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研究分担者 |
一瀬 中 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 上席研究員 (70371284)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結晶育成・成長 / エピタキシャル成長 / 鉄基板 |
研究実績の概要 |
Fe単結晶を(100)、(110)、(111)などの様々な結晶面で切り出した基板上に、カルシア含有量を変えることで格子定数を変化させたCSZ薄膜を成長させ、それら試料の結晶方位、歪状態、微細構造を詳細に調べることで、不整合ヘテロエピタキシャルの成長メカニズムを解明することを目的に研究を行っている。本年度はCSZの類縁物質であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いて実験を行い、物質による核発生・核成長の違いを精力的に調べた。基板は昨年度と同様に、{110}<001>集合組織を有する4%Si-Fe合金を使用し、その上に様々な条件でYSZをパルスレーザー蒸着法によって成膜した。 これまでの結果と異なり、YSZ薄膜を成長させた場合にはCSZ薄膜を成長させた場合と異なり、4%Si-Fe合金表面に(111)結晶核はほとんど発生せず、YSZ薄膜成長開始初期から試料薄膜中のYSZ結晶はほぼ全てが(110)Fe//(100)CSZかつ[001]Fe//[011]CSZの方位関係を持って成長した(001)結晶粒であった。この現象は基板温度700~800℃の範囲では何れの成膜条件であっても同様であり、CSZ薄膜で観察されたような(111)結晶粒と(001)結晶粒の同時核発生→選択成長のような現象は観測されなかった。 4%Si-Fe合金とYSZ界面に、酸化鉄、酸化シリコンなどの薄い酸化物相が生成することによって、YSZの場合にはCSZと異なった核発生・核成長を行う可能性があるので、試料断面の微細構造を透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析法(EDX)により詳細に観察した結果、界面には特に反応によって酸化物層が形成されてはいないことが確認できた。現在のところ、化学的、結晶学的に極めて近い性質であるYSZとCSZで異なった核発生・核成長を行う原因は不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CSZとYSZで、これまでに大きく結果が異なることは予想外の結果であった。しかしながら、この予想外の結果は、不整合ヘテロエピタキシャルの成長メカニズム解明への大きな突破口を与えるきっかけとなる可能性があるので、じっくりと実験データの蓄積を行うと同時に、深い考察を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、YSZ組成を大きく変化させることで格子定数を変えたYSZ薄膜を作製することで当初計画よりも幅広くデータを収集したい。また、異なる結晶方位面を持つ基板上への成膜時実験も進める。
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