研究課題/領域番号 |
16H04552
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60200200)
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研究分担者 |
渡邉 哲 京都大学, 工学研究科, 講師 (80402957)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コロイド結晶 / ナノフルイド / 自己組織化 / 移流集積法 / 相互作用力測定 |
研究実績の概要 |
本研究では,コロイド粒子の移流自己組織化現象を利用した大面積・無欠陥の規則配列粒子膜の形成手法の確立 を目指す。着想のポイントは,従来の単成分溶媒に代えて,ナノ粒子が分散した懸濁液(ナノフルイド)を媒 体 として用いることによるコロイド粒子間の相互作用制御に立脚した,粒子膜構造設計にある。ナノフルイド の特 性は懸濁するナノ粒子のサイズや濃度で多様に変化するため,原子間力顕微鏡を用いた精密な相互作用測 定を行 い,ナノフルイド特有のコロイド粒子間相互作用力の発現機構を明らかにする。 本年度は,ナノフルイドを分散媒としたコロイド粒子懸濁液の移流集積過程を対象に,ナノフルイド中のナノ粒子サイズが,粒子膜の周期構造に与える影響について詳細に検討した。まず,集積手法について検討したところ,当初予定していた垂直堆積法では,ナノフルイドを添加しても均一な粒子膜が得られなかった。そこで,手法を水平移流集積法に変更し,集積実験を行った。大粒子には2マイクロメートルのシリカ粒子,ナノ粒子には30, 50, 90 nmの3種のシリカ粒子を用いた。その結果,ナノ粒子を添加しない場合は,空隙のある粒子膜が得られる一方で,ナノ粒子を添加することで,均一な粒子膜が得られることが明らかとなった。その粒子膜の均一性は,添加するナノ粒子サイズに依存し,今回の条件では,50 nmの場合がもっとも規則性が高い粒子膜が得られた。さらにナノフルイド中での大粒子間に働く相互作用力を明らかとするため,原子間力顕微鏡(AFM)を用いて,探針の先にシリカ粒子を接着したコロイドプローブとガラス基板との相互作用力を,ナノフルイド中でin-situに測定した。その結果,従来の報告に見られたナノ粒子の存在に起因する「構造力」は測定されなかった。一方で,潤滑力による引力が,ナノ粒子を添加することで,減少することを新たに見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集積実験の手法決定と粒子膜形成条件の特定にやや手間取ったため,H28年度は当初の計画から遅れ,予算の繰越申請をせざるを得なかった。しかし,一旦,手法が定まってからは,順調に,かつ集中的に実験を行うことができた。それにより,相互作用力測定にも取り組むことができ,測定手法を構築することができた。従って,H29年9月までには当初の遅れを取り戻し,予定していた検討内容をほぼ達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で,ナノフルイドを分散媒としたコロイド粒子懸濁液を用いた移流集積実験を主に行い,規則構造形成に向けた実験手法を確立することができた。今後は,移流集積実験をさらに深化させ,イオン濃度やpHが集積構造に与える影響を検討する。さらに,ナノフルイド中での相互作用をin-situに測定する実験装置も構築できたため,それを活用し,相互作用と周期構造の関係を明らかにする。
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