本研究では,コロイド粒子の移流自己組織化現象を利用した大面積・無欠陥の規則配列粒子膜の形成手法の確立を目指す。着想のポイントは,従来の単成分溶媒に代えて,ナノ粒子が分散した懸濁液(ナノフルイド)を媒体として用いることによるコロイド粒子間の相互作用制御に立脚した,粒子膜構造設計にある。ナノフルイドの特性は懸濁するナノ粒子のサイズや濃度で多様に変化するため,原子間力顕微鏡を用いた精密な相互作用測定を行い,ナノフルイド特有のコロイド粒子間相互作用力の発現機構を明らかにし,ナノフルイドが構造形成過程で担う役割を解明することが目的である。 本年度は,ナノ粒子サイズ,pH,イオン濃度を変化させ,コロイドプローブとガラス基板間に働く相互作用力をナノフルイド中でin-situに測定した。その結果,ナノ粒子を添加しない場合に働く流体力学的な潤滑力が,ナノ粒子を添加することによって小さくなり,その効果は粒子サイズ大きくなるほど顕著になることが明らかとなった。これは,コロイドプローブと基板との間にナノ粒子が挟まることで,空隙が広くなり,その結果潤滑効果が抑制されたものと考えられる。さらに,ナノ粒子の存在が相互作用力に与える影響を検討するため,格子ボルツマン法とsmoothed profile法を組み合わせた流体シミュレーションを行った。その結果,コロイド粒子間に働く潤滑力は周囲にナノ粒子が存在しても変化はないが,表面間にナノ粒子が挟まった時のみ,潤滑力が小さくなった。これは,実験結果を支持するもので,実験とシミュレーションを組み合わせることで,ナノ粒子が相互作用力に及ぼす影響と役割を明らかにすることができた。
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