研究課題/領域番号 |
16H04554
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
武藤 明徳 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00174243)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 化学工学 / 環境技術 / 廃棄物再資源化 / 水資源 / マイクロデバイス / フローケミストリー / エマルジョン破壊 / 相分離 |
研究実績の概要 |
電場印加法によりO/W型エマルジョンを解乳化させた。水相は純水に0-3.0重量%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解させ、油相には市販のトルエン(特級)をそのまま用いた。両相を所定の有機溶媒分率で混合し、ホモジナイザーを使って24000rpm、1分間、攪拌しエマルジョンを調製した。各エマルジョンがO/W型エマルジョンであることを、拡散法により確認した。エマルジョンを内径1.0 mm、外径3.0mm、長さ760mmのフッ素ゴムチューブを管の上下に、銅電極ではさみ電極間に1000 kV/m、周波数100 Hz、矩形変化する交流電場を、フッ素チューブ管内を流れるエマルジョンに照射した。 フッ素ゴムチューブ管から排出した液体をすべてメスシリンダーに受けとり、液体の上部に分離した透明なトルエンの体積Vを測定した。全体の液の体積に対する解乳化して分離されたトルエンの体積分率Φとエマルジョンの調製のために使用したトルエンの体積分率Φ0の比を100分率として表した解乳化率E=(Φ/Φ0)で定義する。電場の照射時間が増すにつれて、Eは増大した。電場の照射時間[秒]における電場照射「なし」および「あり」の解乳化率Eは、(50秒、3%、8%)、(100秒、8%、12%)、(150秒、12%、12%)、(200秒、18%、21%)、(550秒、18%、18%)であった。解乳化率が10%以下の低い時は電場の解乳化の促進の効果が顕著であった。しかし、解乳化が10%以上では、電場の効果が小さくなった。 エマルジョンの分散相の直径は、解乳化が進行するにつれて、10マイクロメートルから30マイクロメートル程度の大きくなっており、分散相の合一が促進されていることを確認した。フッ素ゴムの壁に分散相(油相)が多く不着していることが観察されたので、不着した油相の合一を促進させることが重要であろうと判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定としては、エマルジョンが流れるフッ素ゴムチューブの上下から、チューブ全体を一様に覆う2枚の銅板電極で挟み、この電極板間に交流電場を印加させる方針で実験を行う予定であった。この電極条件では、装置内を流れるエマルジョンは均一な交流電場を照射される。 水-p-キシレン系エマルジョン(界面活性剤;LAS)において、印加する電場強度 (0-1000 kV/m)、電場を印加する時間 (0-300s)、交流電場の周波数 (0-500Hz)、エマルジョンの分散相(油相)の体積分率の影響が解乳化におよぼす影響を実験により明らかにした。当初の予定どおり、上記に示すようにO/Wエマルジョンの解乳化の可能性を見出した。電場の作用により分散相の油滴が合一し、大きくなった油滴がフッ素ゴムの壁に一部不着していることから、この油滴を効率よく回収することが解乳化に効果があることを示唆している。 新たに発生した課題としては、解乳化率が20%程度より大きくならない点である。解乳化の向上については、次年度に開発する予定になっている新規に考案する電場の強度を不均一にする電極の開発においても考慮する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの電場発生用の両電極は100 mm × 100 mmの正方形で全く同じ形状であり、辺を全く同じく重ねていて、場所において変化のない強度の電場をフッ素ゴムチューブ管に照射していた。今後は上下の電極の形状を変え、電場の影響が場所において異なる新規なパターンを考案し非対称とする。これにより、流路を流れるエマルジョン相と有機相に、電場密度の強弱を流路内に生じさせることが可能となり解乳化をさらに促進させることが予想される。このような電極の試作するアイデアはすでにあり、採択後直ちに着手する予定である。非対称の形状(電極の有り無しの比,幅など)を考慮することにより,エマルジョンの解乳化が促進することができるなら,(1)印加時間がより短時間で,(2)電場を与える装置がより電圧の低い装置でも使用可能で,(3)細管より管径の広くすることができ,大量のエマルジョンの解乳化処理が可能になる。また、エマルジョンに交流電場を照射するときの管の材質を、ガラス(親水性)とフッ素ゴム(親水性)の2種類を使い、材質の表面状態がエマルジョンの解乳化におよぼす影響を明らかにする。 電場の強度分布および交流周波数の時間的な変動が電場の強度におよぼすの影響は、シミュレーションソフトを新たに購入することにより、明らかにする。解乳化実験の結果と合わせて検討を行い、解乳化に適した電場の照射条件を提示したい。また、可能であれば、実際にその電極を試作し、実際の実験を行うことにより実証を行う。
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