研究実績の概要 |
昨年度、我々は培養細胞に対する微粒子の曝露方法を工夫した上で、導入したフローサイトメーター(FCM)を駆使して解析することによって、「細胞表面への微粒子の付着量を単一細胞レベルで評価するFCM技術」を開発した。その際、小さなサイズの蛍光粒子(粒子径100 nm)を用いたため、FCMでは粒子1個1個を識別できず、細胞の自家蛍光値を差し引いた細胞1個あたりの蛍光強度値、すわなち「付着量に比例する値」しか得ることができなかった。今年度は、我々のFCM技術を単一粒子レベルの分解能にまで到達させることなどを目指した。主に得られた研究成果は、以下の通りである。
(1) 種々の蛍光粒子(粒子径: 200, 300, 500, 1000 nm; 粒子材質: ポリスチレン, シリカ)に対して、単一粒子レベルのFCM解析を試みた結果、粒子径が300 nm以上であれば可能であること、媒体である水との屈折率の差が大きいポリスチレン粒子の方が容易であることがわかった。
(2) 粒子径1000 nmのカルボキシル修飾ポリスチレン(PS-COOH)粒子、粒子表面を被覆するためのタンパク質(ウシ血清アルブミン (Ab), 免疫グロブリンG (IgG), フィブロネクチン (Fn))、マクロファージ様細胞株(J774.1)を用いて実験をおこなった結果、異なる表面被覆物質をもつPS-COOH粒子のJ774.1細胞表面への付着数は、Fn > IgG > 無被覆 > Ab の順に大きかった。この結果は、粒子径6000 nmのPS-COOH粒子を用いてコロイドプローブ原子間力顕微鏡(AFM)によって得られた付着力に対する粒子の表面被覆物質の序列と一致した。
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