研究課題/領域番号 |
16H04560
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 啓司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80293645)
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研究分担者 |
小島 義弘 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (80345933)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 反応装置 / ソノプロセス / ウルトラファインバブル / キャビテーション / 超音波 / 化学工学 |
研究実績の概要 |
本年度は超音波キャビテーションの化学作用および機械作用に及ぼすウルトラファインバブルの影響について、検討を行った。 1)化学作用に及ぼすウルトラファインバブルの影響 反応効率の高い500kHzの超音波振動子を有する反応槽とウルトラファインバブル生成速度の高い22kHzの振動子を有するウルトラファインバブル生成槽からなるソノリアクターを作製した。反応槽と生成槽をチューブでつなぎ、液ポンプで試料を循環させた。生成槽にポリテトラフルオロエチレン製の沸騰石を入れて、ウルトラファインバブル生成速度をさらに増加させた。また、反応槽に空気をバブリングして、超音波照射による溶存気体量の低下量を抑えた。ヨウ化カリウム水溶液を試料として、超音波キャビテーションの化学作用によって生成する3ヨウ化カリウム生成量を紫外可視分光光度計を用いて測定した。実験した結果、ウルトラファインバブルにより3ヨウ化カリウム生成量が増大した。これはウルトラファインバブルが超音波キャビテーションの核として働き、水が分解して発生するヒドロキシラジカル生成量が増大したためであると考察した。 2)機械作用に及ぼすウルトラファインバブルの影響 超音波照射装置には機械作用の強い20kHzのホーン型振動子を用いた。加圧溶解法で作成したウルトラファインバブル水、あるいは蒸留水を溶媒として、ポリアクリル酸ナトリウムを溶質とする水溶液を試料とした。超音波キャビテーションの機械作用によるポリアクリル酸ナトリウムの低分子化による粘度低下量を測定した。蒸留水と比較してウルトラファインバブル水の方が粘度低下量が多くなった。これは、ウルトファインバブルによりキャビテーション量が増大し、多くのマイクロジェットが発生したためと考えられる。機械効果促進度合いは超音波強度が高いほど大きくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はウルトラファインバブルによる超音波キャビテーションの化学効果、機械効果の増大を目指した。 1)化学効果について、22kHzの超音波照射により連続的に発生させたウルトラファインバブルを供給して、500kHzの超音波照射によるキャビテーションの化学効果を増大させる装置を開発した。さらに、ポリテトラフルオロエチレン製の沸騰石の追加によるウルトラファインバブル数の増加や空気のバブリングによる溶存気体量低下の抑制の結果、化学効果をさらに増加させることに成功した。 2)機械効果について、20kHzのホーン型超音波発生器を使って、加圧溶解法で高濃度に作成した水中のウルトラファインバブルを核として、多くのキャビテーションを発生させ、高分子の低分子化といった機械効果の増大を達成することができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた超純水、あるいはウルトラファインバブル水への超音波照射によるウルトラファインバブルの生成・減少挙動、超音波キャビテーションによる化学および機械効果に及ぼすウルトラファインバブルの影響から得た研究成果を踏まえ、以下の2点を中心にウルトラファインバブルを利用したソノリアクターの排水処理への応用研究を行う。 1)超音波化学反応による金属ナノ粒子の合成(化学作用):金・銀コロイドの粒子形状、大きさ、生成量、安定性の検討 2)超音波霧化による有害・有価物質の分離(機械作用):水溶液中のエタノール・トリプトファン・フェニルアラニンの濃縮率、濃縮量の検討 3)これまでの研究成果の取りまとめと研究成果の発信
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