研究実績の概要 |
金属リン化物は、水素化脱硫や水素化脱硝、水素化脱酸素触媒として、水素を解離し水素化物を与える反応において高い選択性と活性を示し、世界的な規模で研究が進展している。また、リン化物の物性として、電気伝導や伝熱特性がよく、固く化学的にも熱的にも安定性が高いことが知られている。このような触媒作用と物性から、本研究では、中温作動型燃料電池の電極としての、金属リン化物の可能性について検討を行っている。本研究では遷移金属としてNi、Co、Fe、W、Moを用いて種々のリン化物を作製し、それらの中温作動型燃料電池のアノード材料としての可能性を検討した。 リン化物は水素還元法により調製した。目的元素の硝酸塩と(NH4)2HPO4を混合した後、空気中で焼成し、リン酸塩MPO4 (M = Ni, Co, Fe, W, Mo) とした後、所定の温度まで水素気流中で昇温還元することでリン化物を得た。調製したリン化物とCsH2PO4をモル比1:1で混合した混合物をカーボンペーパーでろ過し、これを電解質に転写してホットプレスをかけることでアノードとした。カソードには市販のPt/Cを、電解質にはモル比2:1で混合したCsH2PO4/SiP2O7を用いた。発電試験は、220℃でアノードおよびカソードの両極にそれぞれ30%加湿のH2ガスと30%加湿のO2ガスを供給し、端子電圧が開回路電圧から0.5 Vの間で電流-電圧特性を評価した。この結果、検討した中では、WとMoのリン化物が高い性能を示し、サイクリックボルタンメトリーから求めた電気化学表面積当たりの電流値を比較すると、MoPが市販のPt/Cを上回る性能を示すことが分かった。
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