研究課題/領域番号 |
16H04565
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小松 隆之 東京工業大学, 理学院, 教授 (40186797)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒 / 金属間化合物 / 合金 / 微粒子 / 電子的効果 / 幾何学的効果 / 選択水素化 / 位置選択性 |
研究実績の概要 |
金属間化合物として通常の条件下で調製可能な元素の組み合わせを知るため、今まであまり注目されなかった3~6族元素を含む金属間化合物の調製を試みた。3~6族元素とパラジウムとを組み合わせアーク溶解したところ、粉末X線回折では金属間化合物相のみが現れ、バルクとしては均質な化合物が得られることが分かった。一方、空気中では表面の酸化が問題となる。そこで高温で還元処理した金属間化合物Pd3Tiを、真空下で石英管中に封管し、グローブボックス内で開封して真空容器に移し、XPSを測定した。Pdは0価のみから成ることが示されたが、Tiでは2~4価に酸化されたものが主要な成分であった。スパッタすると0価のTiが増加したことから、表面近傍のTiが酸化されたと考えられる。手袋の取り付け部付近に脱酸素剤を設置すると、酸化されたチタンの割合が低下したことから、表面近傍のチタンが極低濃度の酸素によって酸化されることが明らかとなった。 金属間化合物の面特異的な触媒作用の存在を明らかにするため、特定の形状をもつ金属間化合物微粒子の形成を試みた。はじめに担体を用いずに、立方体および正八面体の形状をもつPd3Pbを得た。粒子の形状および大きさはある程度均質であったが、高温下でシンタリングした。そこで、アルミナを担体としてその表面に金属間化合物微粒子を形成させる方法について検討した。その結果、立方体あるいは正八面体の微粒子が全粒子の半数以上を占めているPd3Pb/Al2O3が得られた。これらを触媒として、N-イソプロピルベンジルアミンの酸化脱水素反応を行ったところ、立方体粒子の方が正八面体粒子より高いTOFを示した。立方体を形成している(100)面の触媒としての優位性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3~6族元素を構成元素のひとつとする金属間化合物においては、3~6族元素の酸化が起こりやすいことは予想通りであった。また、その酸化を表面近傍だけに抑える方法を確立したことにより、今後研究対象にできる化合物の種類が大幅に増加した。 一方、金属間化合物微粒子の形を均質にする調製法については、ある形状の粒子だけを100%得ることは困難であった。ただし立方体あるいは正八面体の微粒子のうちどちらかを優先的に合成することには成功した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、これまでのところ大きな予定変更を必要とするような結果は得られていない。そこで引き続き、単一相の金属間化合物微粒子を得ること、その触媒作用を様々な反応について解明すること、およびその結果をフィードバックして触媒性能をさらに向上させることなどを目指して、今後も研究を推進いたします。
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