研究課題/領域番号 |
16H04566
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横井 俊之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00401125)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゼオライト / ヘテロ原子 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノ空間が高度に制御された結晶性多孔質材料であるゼオライトの「イオン交換能」、「触媒能」はシリカ骨格に導入されたヘテロ原子の種類ならびにその導入量により依存する。本申請研究では新たに“ゼオライト細孔内における「ヘテロ原子の位置」”に着目している。H29年度までにおいて、ゼオライト細孔内におけるヘテロ原子の位置を特定する構造解析手法の開発(~H29年度)、ゼオライト細孔内におけるヘテロ原子の位置を制御する調製手法の開発(~H30年度)、ヘテロ原子の位置制御によるゼオライトの触媒性能の劇的な向上(~H30年度)に取組んだ。 その結果、これまでのMFI型に加え、CHA型ゼオライトのAl分布の位置・分布を制御する手法を見出すことに成功した。具体的には、CHA型ゼオライトの合成にはSi、Al源としてFAU型ゼオライトを用いるが、その種類、割合を変化させるものである。FAU型を多く使用する、FAU型ゼオライトのAl量を多くすることで、近接するAl種の多いCHA型ゼオライトが得られることが分かった。一方で、このようなゼオライトは耐水熱安定性が低く、またメタノール転換反応において短寿命を示すことが分かった。 またTi含有MWW型ゼオライトにおいても引き続き、位置・分布制御に取組み、ポスト合成法、直接合成といったように調製法に依存して分布が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトはヘテロ原子の位置制御によるゼオライトの触媒性能の劇的な向上を目指している。研究計画に従って研究を遂行し、H29年度末までにMFI型に加え、CHA型ゼオライトのAl分布の位置・分布を制御する手法を見出すことに成功した。またヘテロ原子の位置の評価手法の開発も目標になっているが、この点についても、触媒反応や固体NMR法による評価手法を見出すことができ、予定通り進んでいると考えている。一方で、予定していた触媒性能との関連性、ゼオライト構造の更なる多様化については達成できておらず、H30年度の継続課題になっている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度までに開発した各種ヘテロ原子の位置を制御したゼオライト触媒の性能評価を進め、性能を触媒設計にフィードバックする。以下の触媒反応をターゲット反応とする。 a)低級アルコールから低級オレフィンを選択的に合成する酸触媒反応(ヘテロ原子Al)メタノールを原料として低級オレフィン(ブテン類、プロピレンやエチレン)を得るMethanol To Olefins(MTO)反応を実施する。 b)非可食バイオマスからの有用化学品合成反応(ヘテロ原子:Al、Sn、Ti)グルコースからのHMF(5-hydroxymethylfurfural)合成では選択率80%以上(現在40%程度)を目指す。 c)Baeyer-Villiger酸化反応によるラクトン類の選択合成(ヘテロ原子:Al、Sn)Sn含有ゼオライト等を用いることで重要な化学品であるε-カプロラクトンをシクロヘキサノンからBaeyer-Villiger酸化反応により合成できるという報告はあるが、活性、選択率が課題である。選択率99%以上で得ることを目的とする。 d)位置選択的エポキシ化反応による機能性化学品製造(ヘテロ原子:Ti)MFI型、MWW型、CON型、*BEA型ゼオライトを対象に、Tiの細孔内分布を制御し、医農薬中間体、高性能電子材料原料として利用可能なテルペン類のエポキシ化反応や脂環式アルケニル化合物の末端エポキシ化反応に適用し、目的とするエポキシ生成物の選択率を99%以上とする。
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