研究課題/領域番号 |
16H04571
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山田 真澄 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30546784)
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研究分担者 |
関 実 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80206622)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体組織工学 / 細胞外マトリックス / 肝細胞 / 微粒子 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
本研究の2年目に当たる平成29年度は,初年度に引き続き,ECM質微粒子を利用した,新規3次元肝細胞培養系の有効性の実証を目指した。ECM微粒子の作製法としては,これまでに開発した非平衡状態の液滴を利用する手法に加え,マイクロ流路層流系を利用し,主にコラーゲンを用いて,断片化したファイバーをワンステップで作製する手法を開発した。ECM微粒子あるいは断片化ファイバーを,肝細胞と混合して培養することで,組織形状の維持,機能向上が可能であることを実証したほか,血管網を内包するヘテロ細胞集塊の形成条件の検討を行った。また,肝組織を集積化し潅流装置内において潅流培養を行うシステムについては,主に肝がん由来細胞を用い,マイクロファイバー内に細胞を集積化し,導入流量を制御しつつ培養することで,酸素濃度勾配存在下における肝機能発現(アルブミン,CYP等)の制御を行った。さらに,集塊状の細胞組織について,血管内皮細胞や間葉系幹細胞を導入することで,血管網の形成を可能とする条件の探索を行った。加えて,共連続水性2相分散系を利用することで,細胞を内部に導入可能な,多孔質の細胞培養基材の作製も実証したほか,ECM薄膜を組み込んだ細胞培養系の開発を行った。 以上の検討では,主にヒト培養細胞を利用したが,それに加えて,ラットより単離した初代肝細胞の培養を試みた。粒子としてはI型コラーゲン微粒子を利用し,異なる化学架橋を施した数種類の粒子を調製した上で,初代肝細胞の3次元組織化を試みたところ,肉厚な組織をワンステップで形成できる条件を見出すことができた。今後は,特に初代肝細胞に対して,その機能を最大化・最適化するような条件を見出すとともに,かん流培養系への適用を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ECMからなる微粒子のみならず,断片化したECMマイクロファイバーを作製する新規手法を確立するとともに,各材料を用いた新規3次元培養系の有効性を実証することができた。また初代肝細胞を用いた組織形成を行うことで,本手法の薬剤評価系への有用性を実証する第一歩となる条件を見出すことができた。以上を踏まえると,本研究はおおむね計画通り順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度に当たる平成30年度は,これまでに引き続き,特に肝細胞をターゲットとして,ECM質微粒子を利用した3次元培養系の有用性を評価する。特に,コラーゲンを中心とした粒子のサイズ,導入量,架橋方法,また繊維化度合いが細胞機能にどのように影響を与えるかについて,詳細に評価を行う予定である。細胞としては,主としてラット由来初代肝細胞を利用する予定であるが,場合によっては培養細胞の利用も検討する。また平成29年度には,コラーゲン粒子のみならず,数10~数100マイクロメートルに断片化したコラーゲンファイバーの作製法を確立したため,粒子とファイバーという形態の異なるECM材料が細胞の組織化挙動にどのような影響を与えるかについて評価を行う予定である。さらに,粒子やファイバー状のみならず,中空のチューブ状のコラーゲン材料や薄膜状の材料についても作製し,それらの有用性を実証したい。また,凍結乾燥を用いて作製した多孔性の材料を組み合わせることで,粒子をベースとした3次元培養系の幅広い応用展開を目指す。 細胞培養系としては,かん流培養による酸素濃度の制御を行うことで,細胞機能の最適化・最大化を図る予定である。酸素分圧に依存する細胞機能応答を評価する系の構築を引き続き目指し,実験を進める予定である。さらに,肝細胞の培養系では,肝細胞間に毛細胆管が形成され,その内部に胆汁が保持されることが知られており,そのような胆汁排出系を試験管内で再現することで,薬物の評価において有用な系の開発にも取り組む予定である。
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