研究課題
大腸菌で発現・精製したPDIa4のインスリンに対する還元能の評価を行った。その結果PDIa4の還元活性が確認された。また、酸性配列欠損体PDIa4ΔCBにおいても野生型と同等の活性が示された。本実験より、PDIa4が還元酵素として働くとともに、相互作用に関与するとされる酸性配列が、PDIa4単独での活性には寄与しない事が示唆された。次に、CHO細胞より獲得したIgGを用いて、PDIa4の酸化的フォールディング活性を評価した。IgGをDTTで還元した後、PDIa4によるリフォールディングの様子を非還元SDS-PAGEで観察した。その結果、PDIa4の添加に伴ってIgGが中間体を経て成熟化する様子が観察された。さらに同サンプルについて、抗HC抗体および抗LC抗体を用いたWestern blotを行い、ImageJを用いて泳動バンド強度を定量化した。中間体を含めた全バンド強度に占めるIgGの割合をグラフにしたところ、PDIa4添加に伴うIgGの増加が確認された。本実験より、PDIa4はIgGに対しジスルフィド結合形成を促進する酸化酵素として機能することが示された。大腸菌組換え体として獲得したFabを用いて、PDIa4のシャペロン活性を評価した。Fabをグアニジン塩酸塩およびDTTで変性還元した後、PDIa4によるリフォールディングを非還元SDS-PAGEで観察した。抗LC抗体を用いたWestern blotを行い、ImageJを用いて泳動バンド強度を定量化した。変性状態LC、フォールディングしたLC及びFabの3種のバンド強度に占めるFabの割合をグラフにしたところ、PDIa4 添加に伴うFabの形成が示された。さらに、変性状態LCの減少速度も上昇したことから、PDIa4が酸化酵素に加えシャペロンとしても機能することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
CHO細胞での抗体形成におけるPDIa4の重要性を示し、PDIa4がin vitroで抗体の構造形成を促進することを明らかにすることに成功している。後1年で当初の目的を達成できる成果を得ている。
これまでの研究で、プロテインジスルフィドイソメラーゼの1種であるPDIa4がCHO細胞における抗体の構造形成において重要な役割を担っていることを示唆する結果を得ることに成功した。大腸菌で発現・精製したPDIa4がDTTで還元処理したIgGと組換えFabのフォールディングとジスルフィド結合形成を促進することを示す結果を得ている。しかし、PDIa4がどのように抗体の構造形成を促進しているかは不明である。一般的なプロテインジスルフィドイソメラーゼは触媒部位であるチオレドキシンドメインを2つ有するのに対して、PDIa4には3つのチオレドシンドメインがある。この構造的特徴により、PDIa4がIgGの複雑なジスルフィド結合形成を触媒すると考えられる。PDIa4の構造については、ドメインの構造のみ解析されており、全長の構造解析は明らかになっていない。そこで、IgGを基質とした機能解析と全長の構造解析を目的に研究を行う。まず、IgGのH鎖とL鎖を大腸菌で生産し精製する。IgGの構造形成の律速段階の1つはプロリンの異性化であり、Cycrophilin B(CypB)が触媒することが分かっている。そこで、CHO細胞由来CypB存在下で、PDIa4による組換えH鎖とL鎖からのIgGの形成を評価する。IgGの形成は、Native PAGE等で解析する。PDIa4の結晶構造解析では、構造がFlexibleに動くことが結晶化や構造決定に問題となる可能性がある。そこで、単独での結晶化に加え、還元IgGとの共結晶化なども試みる。
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