平成29年度に引き続いてCHO細胞由来PDIa4の機能・構造解析を行った。in vitroにおける抗体構造形成への効果を確認したが、PDIa4の結晶化には至らなかった。PDIa4の一過性発現の効果についてもあらためて確認を行ったが、抗体成熟度および抗体生産量に有意な効果はなかった。免疫染色により発現させたPDIa4の局在を解析したところ、発現したPDIa4もERに正しく局在していたことから、PDIa4の強制発現の効果はないと結論した。本研究で用いているCHO HcD6株では、抗体産生に伴うERストレスは誘導されていない。CHO HcD6株では抗体産生量が過剰ではなく、十分な量のPDIa4が生産されており、過剰生産の効果がなかったと考えられる。PDIa4の寄与を明確にするために、CRISPR-Cas9 を用いたゲノム編集でPDIa4のノックアウト株作製を試みた。CHOのゲノム情報が不完全であったため、gRNA1種とCas9 Nucleaseを用いた2本鎖切断ではなく、gRNA2種とCas9 Nickaseを用いた2つの短鎖切断によるダブルニッキング法を採用した。Cas9プラスミドとドナープラスミドでコトランスフェクションし、Blasticidinによるスクリーニングを行い、限界希釈法によりシングルセルスクリーニングを行った。PCRによりゲノム編集されているクローンを得たが、抗PDIa4抗体による免疫染色を行ったところ、ノックアウトされていないことが分かった。
|