研究実績の概要 |
金属ナノ粒子はバルクではみられないナノ粒子特有の性質を示す。近年、この性質を利用して、生体分子や高分子材料と複合化させることによるバイオ分野や医療分野等への応用が試みられている。しかしながら、金属ナノ粒子表面は一般に強い疎溶媒性を示すため応用の過程において溶媒中で凝集してしまうことや、反応点が限られているといった問題がある。すなわち、金属ナノ粒子と他の材料を複合化させるためには、金属ナノ粒子表面を修飾し、表面改質を行うことが必要である。我々は、ナノ粒子表面改質法の中でも最も汎用的な界面活性剤による表面修飾法に着目した。しかしながら、界面活性剤の金属ナノ粒子表面への吸着は物理的な吸着平衡に支配されるため、界面活性剤が材料表面から脱着してしまうという課題があった。界面活性剤の脱着によって最終的に粒子同士が凝集してしまうだけでなく、フリーの界面活性剤が生体分子の機能を阻害する恐れがある。 そこで我々は、界面活性剤に重合性官能基を導入した重合性界面活性剤を開発し、界面活性剤同士の重合を行なうことを提案した。重合性官能基としてメタクリロイル基,親水基としてポリエチレングリコール鎖, 疎水基としてアルキル鎖らなる重合性界面活性剤数種を新規に設計,合成した。この合成した重合性界面活性剤を用いて、金ナノ粒子 (AuNPs) 表面上での重合を行った。水中でAuNPs表面に重合性界面活性剤を吸着させた後に架橋剤にN,N'-methylenebisacrylamide、重合開始剤にammonium persulfateとN,N,N',N'-tetramethylethylenediamineを用い重合を行った。次に、各AuNPsの酸性条件下での分散試験を行った。この界面活性剤の重合性を評価し、またナノ粒子分散剤として機能することも実証した。
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