研究課題/領域番号 |
16H04581
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神谷 典穂 九州大学, 工学研究院, 教授 (50302766)
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研究分担者 |
若林 里衣 九州大学, 工学研究院, 助教 (60595148)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タンパク質 / 生体触媒 / 翻訳後修飾 / バイオコンジュゲート / 自己集合 / 固相基質 / バイオインターフェース |
研究実績の概要 |
初年度の検討においては、構成ユニットとなる各種タンパク質の調製と、その空間的な配置を可能にする足場分子との融合について検討した。前者において、タンパク質自己集合体を構成するタンパク質ユニット間での協奏効果の発現を志向したバイオマス分解酵素ユニットの調製と、実バイオマスの分解における協奏性の発現について検討した。さらに、連携研究者の九州大学農学研究院日下部教授の協力を仰ぎ、カイコによる組換えタンパク質生産システムを利用して、免疫系細胞の増殖に寄与する組換えサイトカインへの基質ペプチドタグの導入、タグ選択的な部位特異的小分子導入を達成した。 後者については、分担研究者の若林博士の協力を仰ぎ、合成高分子への人工リガンド分子の導入と、組換えタンパク質に導入されたタグ選択的な部位特異的修飾を通した一次元タンパク質集合系の設計について検討した。対象タンパク質として抗体結合タンパク質と酵素の融合タンパク質を選択し、抗原の高感度検出系をモデルとして、機能性組換えタンパク質の集合化による検出感度の向上についての概念実証を完了した。また、基質認識分子ユニットとして核酸アプタマーを導入した人工糖質加水分解酵素の設計についても基礎検討を実施し、塩濃度に応じて活性がスイッチする人工セルラーゼの調製に成功した。以上の成果を、学術論文3編に纏めた。さらに、本研究の更なる発展に向け、タンパク質架橋酵素そのもののタンパク質工学的機能改変も遂行し、新規概念に基づく架橋活性の向上を達成し、特許出願に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、タンパク質を機能ユニットとする超分子型自己集合系の構築により創発する新たな機能性を追求することを目標としている。具体的には、酵素反応を用いた独自のタンパク質修飾技術を用いて、リガンド分子が部位特異的に導入された生体分子ユニットを設計し、生体分子間に特異的な相互作用を人工的に導入することで、分子ユニットが自発的に組み上がる機能性タンパク質自己集合系の構築を第一目標としている。初年度の検討においては、当初目標に掲げた全ての項目について基礎検討を実施し、今後の展開に資する各種材料の準備ができた。また、合成高分子との融合による新たな機能の創発について、概念実証試験を実施することができた。以上の成果から、初年度の研究については概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、主として以下の3点について基礎検討を実施する。 1)高機能性タンパク質ユニットの調製:機能ユニットとなるタンパク質について、対象タンパク質のレパートリーを拡大する。具体的には、連携研究者の日下部教授の協力の下、カイコによる組換えタンパク質生産システムを利用した修飾用タグを付加した生理活性タンパク質の発現・調製を実施する。また、ペプチドタグ配列の最適化、生体界面での機能化を志向した合成小分子リガンドの設計と合成、リガンド修飾タンパク質の機能評価を行う。 2)固相基質の高効率分解を志向した生体触媒自己集合系の構築:異なるタンパク質から構成される天然の酵素集合系を範として、固相基質の分解に必要とされる酵素(触媒)ユニットや基質結合ユニットを選択する。これらの分子ユニットに導入された修飾用ペプチドタグ特異的なリガンド導入により、酵素が自己集合した生体触媒系を調製する。リガンド導入位置と酵素の組み合わせが触媒挙動に与える影響を評価し、固液基質界面で効率よく機能する生体触媒の設計指針を得ることを目標とする。 3)異種生体高分子集合系の構築と細胞表層タンパク質検出の試み:新たなタンパク質集合系の構築を志向し、特定のターゲット分子を選択的に認識可能な生体高分子を認識ユニットとして組み込むことにより、細胞表層に存在する膜タンパク質を認識可能なタンパク質集合系の構築を試みる。分子認識ユニットならびに集合化の駆動力として合成分子との複合化に注目し、検出部位として蛍光タンパク質や酵素を導入することで、細胞表層の受容体タンパク質を選択的に認識可能なタンパク質集合系の構築を目指す。
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