研究課題/領域番号 |
16H04589
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
宮坂 武志 岐阜大学, 工学部, 教授 (60303666)
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研究分担者 |
朝原 誠 岐阜大学, 工学部, 助教 (40633045)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 推進・エンジン / ロケット / 電気推進 / 航空宇宙流体力学 / プラズマ計測 |
研究実績の概要 |
大規模宇宙輸送ミッションに適応可能な大電力電気推進機開発として複数基のホールスラスタヘッドによって構成されるクラスタシステムについて、マグネチックレイヤ型2基システムに関する研究を実施し、干渉効果が推力へ影響を与えることが明らかになっている。この干渉効果の解明を目的に実施した平成28年度までの研究、特に2基のヘッドに印加する磁力線方向の組み合わせの違いに関する測定結果から、この干渉効果は、プルーム干渉領域の干渉場自身によるものだけでなく、干渉場を通じて逆流電子が電離・加速過程に影響を及ぼした結果としても現れている可能性が示された。 そこで、この逆流電子の特性に着目し、平成29年度研究において電子供給源である中和器、つまりホローカソードの位置が推進性能、放電特性に及ぼす影響についての詳細評価を実施した。 中和器位置を軸方向に変化させることで、特に推力に影響を及ぼすこと、またその主因としてイオンビームエネルギーへの影響が挙げられることが示された。これらの結果は、中和器から放出される逆流電子が干渉効果を受け加速チャンネル内に流入することで、加速チャンネル内の電離・加速過程に影響を及ぼしていることを意味している。つまり、干渉場が電離・加速過程へ影響を及ぼしていることを示している。また、放電電流波形の評価から、Breathing Modeと呼ばれる振幅の大きな振動モードについてその周波数が、中和器位置によって影響を受けていることが示された。この結果は、中和器位置に違いにより逆流電子を通じて加速チャンネル内の電離・加速過程に影響を及ぼしていることを表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中和器位置依存性の測定により、2基作動時におけるプルーム干渉過程を通じて電離・加速過程に影響を及ぼす機構解明の目処が得られた。 軸方向に中和器位置を移動させた場合の放電電流振動評価により、逆流電子がその機構に主な影響を与えていること、電離・加速過程への影響により、イオンビームエネルギーの違いとして推進性能に影響を及ぼすことが明らかになっている。これらの結果は、電離・加速過程への影響を考慮した最適化指針の導出に強く寄与するものと考えている。 また、これらマグネチックレイヤ型の2基干渉効果知見を基にアノードレイヤ型についても同様に評価を行う事で、磁力線干渉と逆流電子特性の関係、特に、拡散についての知見を整理することができ、マグネチックレイヤ型へのフィードバックが可能となっている。 これら2種類の2基作動によって得られた知見は、マグネチックレイヤ型ホールスラスタ2基システムの粒子シミュレーション模型の構築において有効なものであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの結果を踏まえて、マグネチックレイヤ型2基システムのヘッド内直接プラズマ診断を実施する。静電プローブによる加速チャンネル内の電子温度分布、電子密度分布、エミッシブプローブによる電位分布診断を実施し、2基の磁力線方向の組み合わせ、中和器位置が電離・加速過程を通じてイオンビームエネルギーに及ぼす影響を逆流電子特性の観点から評価する。 また、粒子解析コードにより、2基作動時の上記効果の検討と2次元的な配置である3基作動時の干渉効果について予測し、アノードレイヤ型を用いた大電力クラスタシステムの設計指針を探る。
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