本研究は,複合材料に内在する3 次元の熱伝導異方性分布を,マイクロおよびマクロスケールで高精度かつ迅速に測定できる手法を独自に開発し,これまで有効な方法が無かった先進複合材料のマルチスケールでの熱伝導率異方性分布評価技術を確立するとともに,本技術を非連続繊維型複合材料などのランダム配向複合材料に応用することで,従来にはない熱伝導率分布と繊維配向性分布を非接触で迅速に同定できる独創的な技術とその解析理論を確立することを最終目的としている。 今年度はこれまで確立した熱伝導率分布を配向同定法に応用することを中心に行った。まずLFT-D法により製作した大型の非連続繊維型複合材料を入手し,その中の熱拡散率方向依存性を多点計測を行い,その分布を明らかにした。次に本結果を基に繊維配向を決定するため確率密度関数および楕円関数を用いて方向強度とその分布を求めた。その結果,同一材料内においてプレス時の中心部,壁端部,自由端部により配向分布が異なることが明らかとなった。この違いは製造時の樹脂の流動による影響による可能性が示唆された。 次に,繊維含有量の異なる試料に対して,熱拡散率と密度の関係を調べ,面内方向熱拡散率および厚さ方向熱拡散率がそれぞれ繊維含有量に比例して変化することが確認された。以上の結果から,本研究により確立された熱拡散率測定法は繊維配向分布の同定および繊維含有率の非破壊同定に用いることが可能であることが実証された。
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