研究課題/領域番号 |
16H04593
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
各務 聡 宮崎大学, 工学部, 准教授 (80415653)
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研究分担者 |
橘 武史 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (50179719)
山本 洋司 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (50707453)
友松 重樹 宮崎大学, 工学部, 助教 (30315353)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙用推進機 / 二液式 / 液化ガス / ジメチルエーテル / 亜酸化窒素 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,本研究の初年度であるため,1) N2O(亜酸化窒素)/DME(ジメチルエーテル)推進機の試作評価,2)内部観察に資する工学系の設計製作を行った.1)については,性能の比較のため,目標推力0.4Nの衝突噴流型と予混合型の両方を試作した. 衝突噴流型として,シャワーヘッドとオリフィスを組み合わせる独自の噴射器を設計し,コンピュータシミュレーションにより,燃焼室内における流速と酸化剤燃料比(O/F)を評価し,スパークプラグ近傍で,点火のために必要となる流速とO/Fを得ていることを確認した.試作機を用いて作動実験を行った結果,安定した作動を確認し,また特性排気速度効率が68%まで向上するに至った. 予混合型については,液化ガスの気体混合器が性能に影響するため,コイル型の予混合器の試作評価一般に,流体が曲がると二次流れが発生し,流体の混合が促進されることから,コイルは優れた特性を持つことが期待できる上に,内部の体積も小さいことから安全性にも優れている.CFDを用いて内部の流動を解析したところ,コイル2~3巻で十分にN2OとDMEを混合できることがわかった. そこで,コイル型予混合器を製作し,推進機の試作評価を行ったところ,圧力スパイクのために,不安定な作動になった.そこで,バルブを用いて,推進剤の経路を制御して,点火時は衝突噴流型として作動させ,点火後に予混合型に切り替える方法を着想し実験を行った.衝突噴流型として点火することができるものの,予混合型に切り替えた時点で消炎するという現象がおきた.そのため,次年度には,内部観察を行ってこの原因を解明する予定である. また,2)については,高速度カメラを選定して購入するとともに,レンズなどの光学系を構築し,可視化推進機を設計製作した.このように,内部観察に関してもその準備を順調に進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調であると判断する.平成28年度は初年度であるため,N2O/DME推進機の試作評価と内部観察に資する光学系の準備を主として進めてきた.試作評価に関しては,予混合型推進機において安定した燃焼は得られなかったが,作動を実証するに至っている.また,本方式に適合するコイル型の予混合器を試作し,CFDによって小型でコンパクトな形状でも十分に混合し得ることを示すに至った.衝突噴流型では,シャワーヘッドとオリフィスを組みあせた新しい噴射器の流動解析とそれを用いた性能評価を行い,特性排気速度効率を70%近くにまで向上するに至っている. また,シュリーレン法などに資する光学系の構築もほぼ完成し,購入した高速度カメラシステムの習熟などを行ってきた.よって,実験系の構築に関しても工程を順調にこなしてきたといえる. このように,予想以上の進捗が得られたわけではないが,提案する推進機の要素技術を一つずつ確立し,ノウハウを着実に蓄積しているといえる.よって,概ね順調であると判断できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
先述の通り,0.4N級の衝突噴流型と予混合型推進機を製作し,その性能評価を行ったところ,衝突噴流型では作動が安定し特性排気速度効率が68%に達したが,予混合型推進機では,燃焼が不安定になるか,消炎するなどの現象がおきた.そこで,今後は,CFDによって推力室内部の流動を評価しながら推進機を改良して,特性排気速度効率や比推力効率の向上を図る. 衝突噴流型では,N2OとDMEの混合を促進するために,N2O供給を燃焼室側面から分散供給する方法を検討している.これにより,DMEとN2Oの流量の違いによる流速(運動量)の差を抑制し,燃焼室内におけるO/Fや流速の偏りを少なくし,効率の向上と推進機の熱負担のばらつきを平滑化する. 予混合型については,不安定作動の原因が点火時の圧力スパイクである可能性が高いことから,予混合型に適合する圧力のサプレッサーを試作評価する.従来の推進機では,管路にバッファを設けるなどして圧力スパイクを抑制できたが,予混合型ではこれが困難である.そこで,コイル型混合器を小型化し,その上流にバッファを設け圧力を吸収する.また,圧力スパイクを速やかに減少させるため,メッシュにより冷却することも考えている.また,コイル型以外の予混合器を幾つか検討しており,CFDによる解析と試作評価により,燃焼の安定性と性能の両立を図る. 以上の研究を効率的に行うためには,推進機内部の燃焼や流動現象に係る知見が不可欠であるため,シュリーレン法,二色法,発光分光などの光学的な観測を実施する.なお,昨年度までに,この準備をほぼ終えている.また,予混合ガスの燃焼速度や火炎伝播速度などは,設計に必要なデータであるため,これらの取得を行う.
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