研究課題/領域番号 |
16H04596
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
森田 泰弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80230134)
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研究分担者 |
秋葉 鐐二郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (00013631)
佐伯 孝尚 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (10415903)
上杉 邦憲 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (40013693)
堀 恵一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (40202303)
三浦 政司 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (80623537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 航空宇宙システム / 固体ロケット |
研究実績の概要 |
宇宙開発利用を本格的に活性化するためには,低コストで高頻度の打ち上げが緊急の課題である.我が国の固体ロケットは世界最高峰の技術を有するが,価格水準が高く国際競争力は低い.大型固体ロケットの場合,推進薬(燃料)コストが全体コストの大半を占めるため,推進薬の低価格化が肝要である.本研究では新規開発された熱可塑性樹脂を推進薬の燃料兼結合剤(バインダ)に使用し,これまでの大型低頻度生産を小型連続生産に転換することにより,燃料製造コストの大幅な低減化を目指している.また,機内配線の無線化の開発も平行して進めており,ロケットの組立て・整備・運用コストの低減を図ろうとしている.この両者を小型ロケットに応用することを目的とし,その打上げ,データ評価,実用小型観測ロケットへの提案までを本研究の目標としている. これまでの実績として,研究テーマである低融点推進薬の組成を確立し,小型の燃焼実験により設計の妥当性を確認済みである.この燃焼実験の結果を基に,飛翔型ロケットの設計を進めているが,研究全体としては,(株)植松電機の敷地内(高度100m級)とJAXA大樹宇宙航空実験場(高度1km級)での実施を想定し,2段階の飛翔実験を計画している.平成29年度の当初予定は,高度100m級の飛翔実験の準備を目的とし,飛翔用モータの設計と燃焼試験,および並行して進めている無線点火システムのロケット搭載レベルでの実現可能性を実証することをスコープとしていたが,研究の加速により飛翔実験を完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで蓄積してきた基礎データを基に,推進性能,機械的特性や製造性の観点から新規に考案している低融点推進薬の組成を確立し,新規に制作した小型ロケット用燃焼実験装置を用いた燃焼実験により設計の妥当性を確認した.具体的には,外径約60mmの新規推進薬ブロックを製造し,これを装填した世界最小クラスのロケットモータを燃焼させて,基本的な製造性,着火性,燃焼特性,推進特性についての知見を取得した.また,燃焼試験データの詳細解析によって得られた推進薬燃焼速度や比推力を基に飛翔モータと飛翔型ロケットの設計を進めた. 平成29年度の当初予定は,高度100m級の飛翔実験の準備をスコープとしていたが,研究の加速により,前倒しで飛行実験を成功裏に実施した.
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今後の研究の推進方策 |
計画を前倒して前年度末に飛翔実験を行った高度100m級の超小型ロケットの飛行データを詳細に解析する.その結果を元に,JAXA大樹宇宙航空実験場での打ち上げ実験を想定した高度1km級の小型ロケットの設計を進め,地上燃焼試験を実施する.また,高度100km級の実用小型観測ロケットに向けて新規推進薬・無線点火システムの応用を検討し,提案を策定する. 研究の推進方策として,確実かつ効率的な手法をとっている.まず,飛行規模を予備飛行(高度100m級)と本飛行(高度1km級)に分け,研究計画を2段階に分けて確実に進める構想である.また,研究テーマに関わる新規開発の部分以外には既存の技術を最大限に活用することによって,効率的な研究の推進を図る.具体的には,飛行実験は植松電機(超小型ロケットの打ち上げを定常的に行っている企業)にて開発済みの小型ハイブリッドロケット(固体状の燃料と液体酸化剤を用いた簡易なロケット)の推進装置と点火器を本研究で開発したものに換装して行う. なお,1km級の飛行実験の実施にあたっては,監督官庁から火薬類の製造許可を取得する必要があり,関係省庁との連携を深めつつ手続きを加速する.
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