研究課題/領域番号 |
16H04598
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川村 恭己 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50262407)
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研究分担者 |
岡田 哲男 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10753048)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 船体強度 / 最終強度 / コンテナ船 / 2軸圧縮荷重 / 防撓板 / 動的影響 / 動的縦曲げ最終強度 / 非線形FEM解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、コンテナ船の縦曲げ最終強度評価に関連して、複雑な荷重下における強度に関して検討することである。具体的には、2軸圧縮を受ける船底防撓板の最終強度に関する検討、及び、ホイッピング等の動的荷重下における縦曲げ最終強度に関する検討を行った。 2軸圧縮を受ける防撓板の強度に関しては、前年度までにFEM解析を用いてその崩壊挙動の解明を行っているが、今年度は引き続き実験的に防撓板の崩壊挙動を解明する手法に関して検討した。前年度までのアルミによる溶接小型二重底試験片を用いた実験では最終的な崩壊モードを観察することが困難であったため、今年度はアルミの小型防撓版試験片を作成し、それを用いた圧縮崩壊実験を行うことにより崩壊挙動の観察を試みた。具体的には、小型NCフライス板を用いて小型防撓板試験片を作成する手法を確立するとともに、、疲労試験機を用いて圧縮崩壊試験を行った。これにより、小型試験片の製作方法や実験方法を確立することができた。 動的荷重下における最終強度の評価に関しては、前年度までの縦曲げ崩壊のFEM解析において、材料の動的性質が最終挙動に多大な影響を与える可能性があることがわかった。今年度は引き続き、材料の動的性質が最終強度に与える影響を詳細に検討した。特に、ひずみ速度依存性を表現する際に一般に最も良く使用されるCowper-Symondsモデルにおいては、準静的な(ひずみ速度が小さい)状況における動的降伏応力が過大評価されるだけでなく、ひずみ速度が大きくなった場合の加工硬化係数の過大評価が解析結果に影響を与える可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度までに2軸圧縮下における防撓板の崩壊メカニズムをLS-DYNAを用いたシミュレーションにより解明するとともに、2軸圧縮強度評価式の提案を行うことができた。しかし、アルミ二重底溶接試験片を用いた実験では、最終的な崩壊挙動の観察は困難であった。平成29年度は、防撓板の最終強度評価実験として、防撓板を模した小型アルミ試験片を用いた試験方法について検討し、小型NCフライス盤を用いた試験片の製作と一軸圧縮崩壊試験を行った。以上のように、小型試験片を用いた実験手法をある程度確立できたと言える。今後、2軸圧縮試験の実施方法の検討等の課題が残っているが、本課題については全体としてはおおむね研究が順調に進展していると判断する。 動的荷重に対するコンテナ船ハルガーダーの崩壊挙動に関しては、ひずみ速度影響を考慮したFEM解析としてCowper-Symonds則を用いた動的最終強度評価を行った。その場合、準静的なひずみ速度における降伏応力が過大評価されるとともに、ひずみ速度が大きくなった場合の加工硬化係数の過大評価が、解析結果に影響を与える可能性があることがわかった。すなわち、動的影響としてCowper-Symonds則を単純に導入した場合には、ホイッピング荷重下における動的最終強度が危険側に評価される場合がある。これらの問題を解決し合理的な動的最終強度を評価するためには、今後より妥当な材料モデルの導入を検討する必要があることがわかった。以上のように、新たな知見が得られたことから、本課題についてはおおむね順調に進展しているといえる。 以上の状況から、総合的研究進捗状況としては、おおむね順調にしていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、防撓版の最終強度評価実験に関連して、従来より精度の高い小型アルミ防撓板試験片の製作方法について知見を得ることができた。本年度は、これらの試験方法について引き続き検討するとともに、簡易的な2軸圧縮試験方法について検討する。また、2軸圧縮が可能な複数のアクチュエータを用いた実験方法についても調査検討を行う。さらに、アルミ小型試験片を用いた崩壊実験に対応して、試験片が最終強度まで至るまでの挙動をLS-DYNAによるFEM解析により検証する。 動的荷重に対するコンテナ船ハルガーダーの崩壊挙動に関しては、前年度までのFEM解析ではCowper-Symonds則によりひずみ速度影響を考慮したが、その場合、準静的なひずみ速度における降伏応力の過大評価されるとともに、ひずみ速度が大きくなった場合の加工硬化係数の過大評価が解析精度に影響を与えるため、動的最終強度が危険側に評価されることがわかった。今年度は、ひずみ速度影響を適切に考慮した妥当な評価を可能とするために、LS-DYNAのユーザー定義による材料モデル定義機能を用いた解析方法を検討する。具体的には、LS-DYNAのMAT24の材料モデルを用いて、前述のCowper-Symonds則の欠点を克服した材料モデルを定義することにより、解析を実施することを試みる。これにより、動的最終強度評価における標準的な材料モデルを提案することを目標とする。さらに、得られた材料モデルを用いて、船体はりとシェル要素を結合した解析モデルを用いて動的最終強度評価を実施するとともに、ホイッピング荷重により損傷を受けたハルガーダーの残存強度について検討する。
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