研究課題/領域番号 |
16H04599
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秋元 博路 大阪大学, 工学研究科, 特任教授(常勤) (20283971)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 潮流・海流タービン / 海洋再生可能エネルギー / 垂直軸型タービン / RaNSシミュレーション / 揚力線理論 / 傾斜タービン |
研究実績の概要 |
傾斜した潮流タービンの特性を流体数値計算で把握するため、まず、オープンソースの風車シミュレーターであるQBladeの揚力線理論モデルによる評価を行った。適度な傾斜では、風車ローターの前面投影面積が増えるため出力も増加する事などが確認できた。ただし、ブレードの空力係数を2次元計算で解析する際に粘性の影響が過小評価されるため、既存の実験データと比較して出力が過大に評価される傾向がある。これは、空力係数についても既存の風洞試験結果等を参照する事で解決できると思われる。 また連携研究者である原(鳥取大学)が、Reynolds averaged Navier-Stokes(RaNS)計算による垂直軸型タービンのシミュレーションを行った。この中で、垂直軸型タービンのブレードを支えるアームの抵抗を評価し、その影響が従来考えていたよりも大きい事を示した。これは、アームを省略した流体計算結果と実験の対照が難しい事、よく参照されてきた風洞実験データの精度に疑いが持たれる事を示している。この計算は、クラウドコンピューティング環境で行った。 水槽実験で提案コンセプトを検証するため、直径800mm、高さ1600mmの潮流タービンモデルを製作し、曳航試験を行った。ただし今回の試験では、ブレードの周速と翼弦長を基準とするReynolds数が低いため揚抗比が低くなった事、ブレードとアームの結合部の流線型処理が十分でなく抵抗が大きかった事などから、発電に十分な回転に達する事は出来なかった。次の平成29年度に行う水槽実験では、ブレードを翼弦長の長いものに変更するとともに、ローター強度を増やして曳航速度を上げる、この問題を解決できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RaNS計算および揚力線理論に基づく2種類の流体数値解析で検討したところ、各手法の問題点および既存の不動実験データの不十分さが認識された。把握された問題点を解消する必要がある。 水槽曳航による初期の実験では、十分な回転・トルクが得られなかった。この原因はある程度理解できており、次回の実験で解消できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の水槽実験では、ローター仕様を再検討し、実験時のReynolds数上昇と抵抗削減によりトルク不足の問題を解消する予定である。また乱流促進のためのトリップワイヤーの使用も検討する。層流乱流遷移が起こるReynolds数領域を十分に超える条件では安定したトルクが得られる事は別のプロジェクトで確認している。いずれにせよ、これは水槽実験のサイズ制限から来る問題であり、より大型となる実用機には影響しない。 風洞実験や水槽実験の低Reynolds数条件では、層流剥離や、乱流遷移と再層流化に伴う不安定があるため、この付近のRaNS計算の結果を解釈する際には注意が必要である。また、アームの抵抗およびブレードとの干渉は無視できないレベルである事が28年度の検討で分かっている。これらを考慮しながら、RaNS計算と揚力線理論計算の手法を見直し、再評価を行う。 これまで比較によく使われてきた風洞試験は、抵抗が大きい矩形断面のアームを使用し、その形状の記述も不完全である。またアーム抵抗の影響は、タービン傾斜時に大きくなる事も予想される。このため提案コンセプトの実現性検証と並行して、精度を重視した、より高Reynolds条件の曳航試験を実施し、垂直軸型タービンの基礎データを取得する事を検討する。
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